捧げ物

□願いの先は…
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「暇ならラビ達と遊んでろ」
「神田と居たいんだ、だって僕は…」
「言うな」

それ以上の言葉を聞きたくなくて制すが、彼は怯む事なく、神田が好きだから、と続けた。

「冗談なら他所で言え」
「冗談なんかじゃない」

彼が自分に対する思いを口に出せば出すほど自分の中で広がる苦い思い。


目の前の少年は、彼と同じであって同じではない。

そう、この言葉は『彼』の言葉ではないのだ−。

その事実に、ちりちりと胸が焦げ付くような感覚を覚える。
ともすれば目前の少年に、ぶつけてしまいそうな焦燥のような苛立ち。


それ以上構っていられなくて、舌打ち一つ、銅アレンの首根っこを掴み上げた。

「うっわ!ちょ何すんだ?!」
「モヤシに引き渡す」
「やだやだ!アレンに怒られる!」
「だからそれが嫌なら俺に構うな」
「それもやだーっ!!」

絞まる首に構う事なく銅アレンはもがくが、神田の力は緩まることはなくずるずると教団に向かって引きづって行く。

「あ、アレン此処にいたんだ」
「アレン!」

不意に現れたのは、まばゆい金の髪を持つアレン。
金アレンの出現に神田は、渡りに舟とばかりに銅アレンを押し付けた。

「神田?!」
「そいつと一緒に帰れ」

くるり、と踵を返し再度森の中に足を踏み入れた。
後ろで自分を罵倒する言葉が聞こえたが無視をした。



「神田ってひどい」
「まぁまぁ」
「でも、アレンはあいつの事好き、何だよな…」
「そうだね」

二人は『アレン』から生まれた。人格は違えども、心のかけらは感じている。
そして二人が湖から生まれたということはアレンに『望み』を気づかせる役目があるということ。

二人はふと目を合わせ静かに笑った。




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