宝物
□強まる想い
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「…んだ、…神田っ!」
はっとして振り向くと、俺を見上げてくる可愛い恋人と目が合った。
「モヤシ!?」
「神田どうしちゃったんですか?呼んでも気付かないなんて珍しいですね。怪我とかしてませんか?」
「ああ、大丈夫だ。」
「そうですか、よかった。」
そう言ってモヤシはふわりと微笑む。その笑顔に鼓動が跳ね上がる…
…あぁそうか、コイツだ…。
俺を狂わせたそもそもの原因は。
思えばAKUMAとの戦闘が始まってからは、らしくないことにいつもより集中力に欠けていた。モヤシが怪我してないか気になって、ふと視線を外した隙に自分がやられそうになり、すんでのところで攻撃をかわしたなんてことも何度かあった。
これが他のヤツなら絶対こんなことにならない。一度に多数のAKUMAを相手にすることも、骨折り損のハズレ任務も慣れてる。この程度なら俺にはどうってことはないはずだ。それなのに今回一緒に組んだのがモヤシだというだけで…
―どうやら俺はどうしようもないくらいモヤシに溺れてしまったようだ…
改めて自覚するとモヤシへの愛しさと自分への情けなさで更に疲労がのしかかったような気がした。