捧げ物
□素直な気持ち
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しかし問いかけた先のアレンからの返事はなく代わりに困ったような笑みを浮べるだけ。
「あ!アレン君こんなとこにいたのね!兄さんが結果が出たから部屋に来て欲しいそうよ」
何かあったのか?と更に問おうとしたとき廊下の向こうからリナリーが二人の元へ近づいてきた。
「結果?なんかあったのか?」
「それが…先日の任務でAKUMAの能力で声が出なくなってしまったらしいの…」
悲しそうに顔を伏せたリナリーにアレンは肩を軽く叩き微笑んで見せた。
『大丈夫です』
発することは無くとも唇の動きでわかる。
いつでも自分よりも他人を優先するのだ、この少年は…。少し苛立ちながらもこの状況で当たる訳にもいかずとりあえずアレンと共にコムイのいる部屋へと向かった。
「待たせたね、と神田君?」
書類の山の中に埋もれながらコムイは顔を上げ、アレンの傍に立つ神田に訝しげに視線を向けた。
気にするな、と言いアレンと共にコムイの目の前にあるソファへ座る。
二人を面白そうに見た後コムイは真面目な顔へと切り替え手に持った書類を持ち上げた。
「結果から言うと、アレン君の声は元に戻るよ。AKUMAの毒が喉に入ってしまったのが原因のようだけどアレン君の『イノセンス』がきちんと中和してくれるはずだ」
だから不安に思わなくて良いよ、とコムイはアレンに笑う。
「…どれくらいで元に戻るんだ?」
「はっきりとは言えないが調べた喉の具合から言ってもきちんと治るのに3日はかかるかな」
「そうか…」
ほっとした気配が横から伝わり神田も力を抜いた。
とりあえず無茶はしないように、とのコムイの言葉を終わりに室長室から神田とアレンは出る。