『close』

□第九話 『雷門と蜂の毒』
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ーあと2日ー







「...今日はじじいが教えてくれんのか?」

紅の到着予定時刻まであと2日をきった朝、つるたちはいつもの様に門の上にいた。




3代目は、普通にしじいと呼ぶつるを一回ちらっと見たが、気にせずに口を開いた。


「...うむ。その事なんじゃが、さすがにいっぺんに三人の修行に付き合うのは、わしにも難しい。そこで一人、助っ人を呼んでおるんじゃ。」

3代目はそう言うと、片手をあげて木の影に潜む何かに合図した。


木の葉がうごめく。


影からから現れたのは、二十四、五歳ほどの男だった


「甘屋(とうや)しろだ。おまえたちD班のリーダーを任せることにした。」




3代目が指差す先の男は、ニヤリとわらった。


口にはタバコがくわえられている。

あたりに苦い匂いが広がった。


「...うい、よろしく。甘屋しろだ。そうだな.....しろ隊長とでも、呼んでくれ。」


男はそう言うと、頭をかいてつるの方を見た。


目もとの模様を見て、微笑む


「...なるほど。こいつが例の少年か?3代目。」


「....な、なんだよ、あんた誰だよ?」

つるは意味がわからず頭を傾げた。

「つると知り合い?」


香はキョロキョロと二人を見比べる。


「..そうは見えないがな」


リズは腕を組んで3代目の答えをまった。


3代目は、一回うなずくとしろの方を向く。



「...覚えておるじゃろ、甘屋」


しろはタバコを口からはずすと、ニヤリとわらった。

「...ああ。あたりめえだ。




あの二人の
息子だからな。」




つるは
凍り付いた。



こいつ、あの二人の事知ってんのか..?


3代目以外に知るやつがいた、それだけでもすごいことだった。



「あんた、いったい...」


つるは
しろをみつめた。


しろは微笑み、つるの頭に手をおく。




「信じられないだろうが、おまえの両親に封印術をたたき込んだのは、この俺だ、つる。」










え?




は?
こいつ何言って....


??

「い、いやおかしいだろ、あんたまだ20そこらだろが!」



俺の両親そんな若くねえぞ





つるが
混乱していると、背後で3代目が吹き出した。



「っぶはは。まあ、つるが驚いても仕方がないじゃろう。甘屋はな、ああ若く見えても、もうかれこれ300年はここで生きとるんじゃよ。」


香「ささささ!?」

リズ「ま、まじか...」




つる「.....笑」 



三人がポカーンと口をあけていると、しろもふきだした。


「あはははっ驚いたか、チビども。まあ、俺にまかせろっつーことだ。」


しろはわらった。



「....どういう...体してんだよ、こいつ..」


つるは
ショックを受けていた。


そんなつるに、
しろは近付く。



「そんでもって、今日は俺がおまえを指導するんだ、つる。3代目からあの時の話は聞いていると思うが、今日教えるその術は簡単な術じゃない。
その名も『最高封印術、雷門』。知ってんだろ?」




つるは眉間にしわをよせてうなずいた。

知ってるも何も、両親が最後に使った術なのだから。


つるの手に力が入る。



なぜか表情は険しかった。
「....本当に、その術であいつらの力おさえられんのかよ....」



二人はそれで紅の力を封印したはずだった。



でも
雷門では、
雷門だけではできなかった


あの二人が、
無力だったのだろうか





役立たずだったから
なのだろうか




つるの表情はさらに曇りはじめ、しろはため息をついた。



「...お前、あの二人が無力だったのかとか考えてんじゃねえだろうな。」



つるの背中はビクリと反応する。


「つるよぉ、もしおまえがそれで自信をなくしてるっていうなら、てめえは大ばかもんだぜ。」



「...なんだと?」


しろはまた一つ、タバコに火をつける。


「..てめえの力は、誰がくれたと思ってる。どうしてお前に授けられたと思ってんだ。

そんでお前は、俺が二人の死を無駄にするとでもいうのかよ。なめてんじゃねえぞ」






しろはつるにタバコの煙を吹きかける。



「げほっげほっ...何すんだよ...」



「だからまだガキだっつうんだよ。」


しろは後ろを向いて歩きだした。


「そんなガキのてめえに、少しでも助けるべき、守るべきもんがあるっていうなら俺についてこい。後の二人は3代目に任せる。」


つるの見た背中は


でかく、
あたたかく、



そして
力にあふれていた。






「...ついていかねえ、わけねえじゃん」



つるは駆け出した。


どんな
修行が待っているか
わからない。



それでも、
それでも少年は怖くなかった。


守るべきものが
後押ししてくれたから。




3代目は二人の背中を
見つめる。


「急ぐんじゃつるよ。

お前には、時間がないぞ」




太陽が
輝いていた。
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