『close』
□第八話 『紫の風』
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《ドクン》
闇の中に風が吹く。
《....ここはいったい..》
つるは見知らぬ土地に立っていた。
目の前には紫色の髪をした男と、同じく紫の髪の少年がたたずんでいる。
《紫.....香か?》
とっさにつるが声をかけようとすると男はつるの存在にも気付かずに言葉をはきだした。
「悪いな。もうこれで最後だ」
香だと思っていた男は笑顔を作り、振り返った。
《...香じゃねぇ...じゃこの紫の頭はいったい...》
すると目の前の少年が男の手をつかむ。
「....はなせ、香」
つるは
驚いた。
目の前に立つ、4、5歳程の少年が、香だった。
《...夢か?》
「なんで....」
目の前の香らしき少年の震える手と声には更に力が加わり、頬を涙が伝った。
男はすこし困った顔になり声を絞りだした。
「...俺たちはこの力を持って生まれてきた以上、こうするしかねえんだよ..。お前は俺よりもやさしい。だからこんな真似はさせたくねえんだ。」
サッと手をふりほどき、
歩き出す。
こちらからは表情が見えない。
「....おれも、いっしょに行っちゃだめなのか?」
その声に男は一瞬動きを止めたが、先程とは違い、冷たく言い放った。
「ばーか。てめえはまだガキだろーが。ここに残って、たくさん学べ。あと3、4年もすれば目の国の学校行くんだろ。」
暗闇に消えようとする男の背中は、どこか寂しそうで、香は走り出した。
「兄貴!!!」
男は振りかえる代わりに手を挙げる。
「....わかってくれ....」
また風が舞った。
別れの風は在風家の、あの優しい風だった。
「.....香。強くなって、また会おうな。」
《あいつは....》
次の瞬間、つるはそこから消えた。