『close』
□第三話 『模様と出会い』
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風がつよくなる。
桜が舞って、つるの周りにたくさん落ちた。
門には、『影人養成学校』とある。
もうつるにとって、目の下の模様など気にはならなかった。あの日3代目から聞いた、この模様の秘密を知ったのだから。
今度は額に優しく降りかかる。
「...桜、か。」
つるがつぶやくと、後ろで返事が聞こえた。
「なにか用か、そこのクロ頭」
驚いて振り返ると、金色のショートヘアを風に揺らし、額にはちまきをした少女が立っていた。
「お前、今私の名をよんだろ?」
少女は怪訝そうな顔をうかべ、つるをみた。何が何だか解らない。
「いや、俺はただ、桜に驚いただけなんだけど....」
シーン
何この女...
意味不明。
しばしの沈黙の後、つるがそっと顔を上げると、少女は吹き出した。
「はは、悪い、よくあるんだ、こういうの。今日で4回目かな。」
「....なにが。」
女とは思えない言葉遣い。
自分の事を見ても、全く恐れないその堂々とした態度に、つるは驚いていた。
「いや、私の名、桜リズといってな。桜と聞くと反応してしまうんだ。」
桜リズ。
そう聞いたとき、つるは気付いた。
「お前、空の国の?」
確かにリズの胸元には空の国の紋章が在った。
つるの家の事を知っているのは多くが目の国の住人。わずかな国にしかないこの影人の学校に、毎年いろんな国から生徒が集まる。
だからリズはつるを普通の同級生として、見てくれた。そんな普通の事が、初めてで、うれしくて、つるは自然とほほえんだ。
「おっと忘れてた。この紋章、変えなきゃいけないんだよな、さんきゅ。」
リズはそう言うと、紋章の上に手をかざした。紋章は雲をかたどった物から、だんだんと目の形になる。
「....すげえ」
つるが見とれていると、リズはほほえんだ。
「父に教わったんだ。意識を手に集中させるだけだよ。」
模様が完全に目の形になると、リズは少し痛そうに手をこすり合わせた。
「....痛いのか?」
よく見ると手が火傷したようになっている。
うわ、
赤くなってやがる。
「問題ない。まだ私は未熟だから、コントロールがうまくいかないんだ。」
そういうと、てから少しだけ血が流れ、リズは少しつらそうな顔をした。
《ドクン》
とっさにつるはリズの手を取る。血を見た瞬間、なんというか、体が命令されたように勝手に動いた。
「...おい?」
リズも少し驚いたようだった。
でも自覚がないのだ。
今現在自分がやっていることについて。
「...なんか、よくわかんないけど、手ぇかして。」
「..わかんないけどって..ぉい...」
でも、リズの言葉も、途中でとまった。
つるは、あの日、3代目によって封印がとかれた時のことを思い出していた。
模様が熱くなり、そこから大きな力の流れを感じるあの感じ。まるですべてを吸い取るような、そんな感じだっだ。
それを今感じる。
「....」
そっとリズの手に触れると、つるの模様はキラリと光った。
手をはなしたとき、リズの手に、傷はもうなかった。
ほんの数秒の事だった。