□君と笑っていたい
1ページ/1ページ




夏の昼下がり、佐助は盆にお団子を乗せて
自分の主人弁丸を探していた


「弁丸様ぁ〜」



何時もならピョコン、と顔を覗かして嬉しいそうに
尻尾を振りながらって、コレは勝手に俺の目に
見えるだけなんだけど走って来るのに、どうしたのかなぁ〜、
何てスッゴく気になるんだよね


また、変な兵に虐められてたのか、とか、弁丸様の
母に虐められて泣いているのか不安感に襲われた


「ん…?」



目を凝らして向こうの木を見ると、弁丸様の赤い
着物の裾が木から風に靡いているのが見えた



「あんな処に…」



結構遠いのに、見つけられる自分が嬉しくなるし
、ちょっと行き過ぎかな〜、とか思ったりする
自分に笑いが込み上げてきた





「も〜、弁丸様!飯だよ?」


木の下から、弁丸を呼ぶが只、赤い裾が風に靡く
だけで待てなくなったから弁丸様の所まで行った

第一、落ちて怪我なんかされたら、俺真面目に大変だし
嫌、だからあんな白い肌に傷なんて考えられない!!







「…っぅ…くぅ」


グウグウ、と寝息を立てて気持ち良さそうに
眠り込んでいた弁丸様に笑ってしまった



「弁丸様…風邪引くよ」

柔らかい髪の毛を優しく撫でてあげると、
気持ちよいのか顔が、ふにゃ〜、と和らいだ



そんな弁丸を、目の前で直視した佐助は 可愛い
弁丸様に手を出さないようにと必死に耐えていた


「…っ、〜〜可愛い」



佐助は、優しく微笑みながら弁丸の
顔に指を滑らすように触った



ツルツル、で、ぷにぷに、の肌に佐助はもっと
触りたくなるが自分を押さえ込み必死に耐えた



「ふぬ…っ?」


弁丸のうっすら、と開かれた
瞼から、大きな丸っこいお目が佐助を凝視する



「さしゅ…け」



まだ、半分眠たいのか小さな手を佐助に
伸ばして抱っこ、とせがむ姿に佐助は笑った



「起きましょうね」


「ぅぬ…」


目をコシコシ、と手のひらで掻く弁丸を佐助は
優しく抱き上げて木の上から降り立った



「弁丸様、昼寝は良いですけど、
木の上なんて落ちますよ?」


「あれは、だ、駄目なの?」


ギュッ、と佐助の裾を掴んで怒られると
思い必死に体に力を入れた




「危ないんですよ、弁丸様に何か
あったら俺死ぬ程嫌です」


「佐助死ぬの?」


大きな目に涙を沢山浮かべて佐助に、
抱き付き震える弁丸に佐助は


「違います、弁丸様が大好きだから心配して」


その言葉に、目をコシコシ、とまた拭き疑ってきた


「本当に?」


「はい、弁丸様だけです」


そう言うと、小さな手が優しく佐助の
頬を包み込んで弁丸は笑った


「佐助は、某の事がしゅき?」

「はい、大好きですよ」

優しく頭を撫でるともっと嬉しいそうに弁丸は笑った



「佐助の事、某もっ、だいしゅき」



可愛い笑顔と いきなり弁丸様に口を塞がれた


温かい小さな唇が俺の唇に
当たり、少しすると唇は離れた




「佐助?」



弁丸様が俺の腕の中でもぞもぞ、と
動き回ったが何もかもが可愛く思えた



まさかの弁丸様からの接吻、しかも、忍びの自分を
大好きだと言ってくれる優しい弁丸様に俺はギュッ、と抱き締めた



「佐助嫌だった?」


うるうる、と潤んで涙を流した
弁丸様の涙を舌で舐め上げた



「弁丸様の事は
誰よりも愛してますから」


「愛して?」



まだ幼く、意味が解らないのか 首を傾けたので
頭を撫でて軽く唇に接吻した



「…っん」


そんな声出したら駄目でしょう!?、
なんて慌てながら直ぐ離す


「大きくおなりになりましたら」


解りますよ、と言えば しっかりとした目で
コクン、と首を縦に振った





「それじゃあ、お団子食べますか」

「団子!!」


目をキラキラ、と輝かせて嬉しいそうに
飛び上がった弁丸様を見て此方も嬉しくなった




君と笑っていたい
(嗚呼)(こんな主に)(仕えた)(俺は)(今更だが)(この世で)(一番)(幸せ)(だろう)(此からも)(側に…)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ