ふんけり図書館

□人生いぶし銀〔7巻〕
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『そう言えばお前さん、下界でエノキに会ったぞ』

『エノキ?誰それ?』

『お前さん…自分の父親の名前を忘れたのか?』

『アーッ!猫の父ちゃんか!まだ生きてるんやな、懐かし!』


歴史を感じるな。


父ちゃん…懐かしいなぁ。


ジーン(涙)

『メイとかいうメス猫に猫パンチされてたぞ』

『あ…そう』



……父ちゃん全然学習せんな。

『それにな、今の人間界では一夫多妻が常識らしいな』



どこの国に行ったんだよ!


ジジイ、結婚てのは…



ハッ!!!!!!!


こんな話ししてる場合でないやん!


あたい頭打って記憶が飛んでた!


『ジジイ!大変なんや』

『そうじゃ、大変なんじゃ、世界というのは…』


違う!全然違ーう!


『違うんや!武志が…ジジイ!武志が〜(泣)』

『泣くな!気持ち悪い』



気持ち悪いって…アンタ!

『武志が死ぬ!後一年で死ぬんや…癌で…どうしようジジイ!』

『どうしようって…死ぬことはどうにもならん、ワシに命はあやつれぬ』

『ホンマに一年後に武志は死ぬん?』

『さあ、ワシには死期までは分からん』



なんもできねぇんだな…



『役立たず!』


『なんじゃと〜、特別任務を任されたエリートのワシに向かって!』


勝手にエリートとか言ってるし…



あ!

『うん、悪かった、エリートの慈々様にしか頼めんことがある』

『嫌じゃ』



早っ!

『まだなんも言ってないやん』

『お前さんが慈々様なんて呼ぶ時は、ろくな頼みじゃない、想像つくわい』

『聞いてよぉ〜(泣)』



『金なら貸さん』



オイッ!

『違うわ!ジジイになんか金借りるか!貧乏なくせに!エリートぶんな!』

『なにーッ!もう聞かん、肩たたき券もやらん、さ、仕事、仕事』



肩たたき券はいらん!

『嘘です、嘘です、長い付き合いやん、ジジイの有能ぶりはあたいが一番知ってるやん(汗)』

『まぁ話しを聞くだけなら、エリートの仕事として聞いてやらんこともないがな』



単純やな…。


『武志が、たぶん一年後に死んでここにくるやん?そしたら前世の記憶を残して、人間の男として、あたいの近くに生まれ変わらせてよ、できればイケメンで…』



武志もきっとそれを望むわ。

あぁ武志ィ〜。



早くこのことを伝えて安心させてあげたい。

子犬のような武志ィ〜。




『無理じゃ』


『なんで』

『なんでって…お前さんが一番よく知っておろう、人間の男としてなどの条件は選べても、前世の記憶は残せん、…それに記憶を残せるのは夜11時45分から12時に死んだ者だけじゃ、その変わり何に生まれ変わるかは選べん、全てを選ぶことはできぬ』

『そんなん知ってるよ』

『知ってるなら言うな!ボケたのかと思ったわい』

『知ってるけど…知ってる上で、頼んでるんやん、エリートのジジイならたやすい事やろ?このこのッ』

『おだてても無駄じゃ』



チッ…。


『でも、できんことはないんやろ?』

『まぁ…ワシくらいになれば…ってお前さんもしつこいな、規則じゃ』

『規則なんて破る為にあるんやで?』

『お前さんは青春中の学生か!バレたら反省文だけじゃ済まん、クビが飛ぶわい!』


どっちにしてもクビになる日は近いと思うが…ジジイ。


『あ〜あ〜、せっかくジジイの腕を見込んで…』

『そんなことして、ワシになんのメリットもなかろう、それに反省文はもうこりごりじゃ』




どんだけ反省文書いてんだよ!


メリットか…











メリット?メリット?
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