君の想いに願いをのせて


□ヨンイル様の行方(笑)
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「どうした、ヨンイル?僕には遠く及ばない脳内がまた縮小したか?」
分厚い眼鏡をかけたどこか冷たい雰囲気の少年が、こちらを観察するように見つめていた。
いや、正確には睨みつけているに等しいが、自分より幾分か背の低い少年が睨みつけたとしても恐さなど到底感じない。それどころか、彼は少年に微かに想いを寄せているのだから、仄かに胸が高鳴るのを感じた事実を考えると、『恋は盲目』とは良く言ったものだ。
そんなことよりも問題なのは今この可愛らしい(?)少年は何を言ったかと言うことなのだが。

そもそも、なんでこんなことになってしまったかを考え直してみよう。

今日は10月31日。世の中でいうハロウィンだ。とは言っても此処は世界でも最悪の監獄“少年プリズン”こんなところでハロウィンなんていう可愛らしい行事が開かれるわけもなく、西棟の道化・ヨンイルは不満げだ。
お菓子も悪戯も好きなヨンイルからすれば楽しみな行事ではあるし、此処に来る前は祖父と二人で暮らしており、このような行事はしたことがなかった。
罪状200年の彼にとって一生この監獄から出ることはない。ならば、必然的に此処でそれをするしかない。嬉しいことにブラックワーク上位者の彼は他の囚人よりも自由が利く。
仮装だって出来ないこともない。善は急げ、ヨンイルは準備を始めた。
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