鬼閻 艶

□マンネリ症候群〜その発症及び傾向と対策
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雰囲気変えたいな。
その一言が発端である。

【マンネリ症候群】
 〜その発病及び傾向と対策〜

「もしもーし、鬼男君聞こえてますか?」
「うるさいですよ」

えーと、前略善良な地上の皆々様。
オレは泣く子も黙る閻魔大王様です。
 そうなんだよ!
 オレって閻魔大王なんだよ!偉いんだよ?
なのにこの状況はなんなの!?

 オレとオレの秘書の鬼男君はオレの私室にいます。
 夜摩天じゃなくて、お役所の仮眠室ね。
 寝台とか最低限の家具しかない方。
で、無駄にデッカい寝台にオレは押し倒されてます。

 なんで!?

「ぎゃああ!
 なにすんのっ、鬼男君、まさかのご乱心?!」

「あんたが言ったんでしょ雰囲気変えたいなって」

 言いました!
 言いましたとも。
 この子ったら仕事が終わったら即帰るか押し倒すかのどっちかだし、
 オレ、恋人として寂しいんだもん。
 もうちょい普通の恋人みたいなことしたかったんだよ。
 こう、健全っていうか、青臭いっていうか、セーラー服的っていうか、ていうかフォーエバー。
 で、そんな心中を語ると、何をどう間違っちゃったのかオレの恋人はサクサクとオレの上着を脱がせやがりました。
 君、早とちりが十八番とか?そんなオチ?

「はい、万歳してください」
「なんで?」
「なんでって、着替えるからです」
「はあ?」

 お着替えなの?
 Vネックもサクサク脱がされてしまいました。上半身素っ裸だよ…。
 あんまりジロジロ見ちゃ駄目っ、オレ今じゃすっかり色白さんだし、君みたいにストイックなマッチョさんじゃないもん。
仕方ないでしょ?
 軍神じゃあないんだしさ!動くのって嫌いなんだよ…。

「あのさ」
「はい」
「その手に持ってるのってもしかすると」
「閻魔七つ道具、その七ですが?」

 ……。
 なんで君が持ってんの!
 それオレのだよね?オレ着たりとかしないって言わなかったっけ?

「のわっ!」

 着せられてしまいました。
 ひーん、なんで着れちゃうんだ?
 オレ適当に買ったからサイズとか合わせてないよ?
 うう、もうちょい好き嫌いなくして頑張ってご飯食べます。
 今後の目標が増えたっぽい。

「あの、鬼男君?お尋ねしてもよろしいでしょうか」
「なんでしょう?」
「もしや、スカートも穿かせる気満々?」
「満々です」
「満々だったー!」

 どうしましょう皆々様。
 秘書にどこかの弟子男が乗り移った模様です!
 赤ちゃんよろしくコロンと仰向け、脚を持ち上げられてスカート装着、ズボンを引っこ抜かれました。
 ……こないださ、『触り心地の問題』とかなんとか言って、この子ったらオレのムダ毛永久脱毛しやがったんですよ。そりゃあ、ムダ毛って言うくらいなんだから要らないっちゃ要らないんだけど、あれって今日の伏線だったりするの?

 あ!
 ベタベタしてない。
 これ、いつの間にかクリーニングに出されてる。

「あ!鬼男君たんまっ!」
「往生際が悪いですよ、大王」

 靴下キター、こないだの有給休暇で買ってきちゃったとか?
 どんだけ虎視眈々?ていうか用意周到?
 既に臨戦態勢ですかっ。下の方!

「オレが着ても意味ないじゃん?」
「ありますよ」

 スカートめくるなっての!
 きゃー、まさかの逆パワハラ?

「ないっ、ないったらない。どうせ脱ぐもん」
「まあ、確かにそうですね」

 よ、よかった。
 漸くお話できそう。

「だからね」
「はい」

 なにその呆れ顔。
 むしろ呆れたのはこっちだよ?
 真面目だと思ってた君がまさかのムッツリさん、まさかの変態さん!
 否、いいけどね?
 オレの愛はそれ位じゃあ揺るぎませんよ?
 ムスリと、面倒くさそうに彼は頭を掻いた。めんどくせえイカ、と副音声が言っている。

「雰囲気変えたいなら、着たまんまでいいじゃないですか。
 だからこそのスカートでしょう?」
「はい……」

 なんか着エロ論をぶちまけられました。
 君、顔がマジなんですけど?

 神様、仏様、私の秘書に何が起こったんでしょう。


**

 これは、ヤバい…。
 なんていうかもどかしくていけない。
 こうお互い素っ裸ならさ、オレにも反撃要素あるんだよ?
 なんつーか、年期が違うでしょ?
 でもさ、鬼男君ったら服着たまんまなのね、服越しじゃフェラも出来ないし、精々触るくらいが関の山なんだけど、今日は見事なまでの亭主関白ぶり。
 オレ、かなり受け身っていうか、一方的にヤられちゃってます…。

「うぁっ、…はぁ、あっ」

 薄っぺらな胸を弄っている手が視覚では捉えられない。
 セーラーの中がもぞもぞ動いてて、なんか余計やらしい。

「いつもより興奮してるでしょう?」

 熱っぽい囁きが耳にかかって、ザワザワする。なんかもうオレよりこの体を心得ている鬼男君、カプリと耳朶を甘咬み。
 ゾワリと痺れる熱。
 普段、オレの体は冷たい。けれど、密着する熱だとか、興奮による熱だとかで普段と体温すら変わってしまうから。
 オレは快感にトコトン全面降伏なんです。
 悔しいなあ。
 不満が顔に出ているのか、短いキスを一つ。

「おに、お君の、〜変態鬼っ!」

 人の事散々っぱら変態呼ばわりしてくれちゃったよな君、変態大王イカだっけか?
 こんなオッサンにセーラー服着せて興奮してる君だって変態でしょう?

「淫乱イカ」
「と、とことんイカかよ!、うわっ、スカートめくんないでっ」
「めくんないでやれないでしょ」

 いや、真面目に言われましても…。
 確かにそうなんだけど、恥ずかしいっていうかさ、なんていうか。もう少し、恥じらいを!ギブミー青春のしたたり!
 思わずスカートを押さえた手をやんわりと外された。

「顔真っ赤ですよ」
「だって、スカート…」
「いっつも見てますって」

 そういう問題じゃ

「あっ」
「なんかいけないことしてる気になりますね」

 同意を求められても困ります!
 イメクラじゃないよ。っていうか、秘書の方がイメクラっぽいよねー?
 ってそんな場合じゃなかったんだっけ、なんかもうノリノリだよこの子!

 ひーん、オレ明日起きられんの?

***

「ちょっと、何泣いてんですか?」
「だって、鬼男君が、鬼男君が」

 もう涙腺が決壊しました。
 泣く子も黙る閻魔大王様が泣いてんだもん、カッコつかんよ!
 この責任どうとらせましょうか?

「洗濯はしますよ」
「そっちかよ!」

 別にいいよ、自分で出来るよお洗濯くらい。
 なんかもうスカートベッタベタだし、オレの顔にもよりによって自分のがちょっとかかってんの。
 なにこれどうなってんの?って感じですよあなた。
 脚に神経通ってるのか甚だ疑問。

「君、明日どうすんの?
 オレ動けないじゃんかあ」

「休ませます」

 まさかの断言。亭主関白続行中?
 鬼男君は例によって生真面目な顔で、オレのセーラー服を脱がしながら言う。

「体調不良もこれならオッケーでしょうから」
「はあ」
「明日、僕は有給休暇なんですよ」

 ベッタベタの体を拭ってくれながら言う。
 一回没頭すると加減なくしちゃうけど、こういう時は、本ッ当に優しいんだよ。
 そういうのにオレは弱いんです。ギャップ萌えなんです。ツンデレ大好き。急速落下のデレが好き。

「明日は一日世話して差し上げますよ」

 右手に小さくキス一つ。
 マンネリなんて言ってごめんなさい。
 やっぱり君は最高の恋人です。



【あとがき】

 セーラー服プレイ=閻魔の誘い受けもしくは襲い受けと言うのがセオリーなのでひねくれてみました。
 鬼男君も若いんだよ!
 たまには閻魔に対してガンガン攻めたいんだよ!と言う主張。


 …人様からのリクで!?

 ともっともなツッコミをお受けしそうなのですが、ワタクシメはあまりにも受々しい受けが苦手、というか書けないのです。
 だから、こうギャグ的に振り回されたり、妙に男前な受けになるんです、どうもスイマセン。
 いや、可愛い閻魔も見るのは好きです。
 リク主の涼風さまのお宅でどうぞご堪能あれ!

 タイトルはさだ/まさしさんの

 恋愛症候群 その発病および傾向と対策よりリスペクト
ついでに閻魔が鬼男君を「亭主関白」と呼んでいるのは「関白宣言」からでした。

 シブくてスイマセンね…。

 とまあ、はっちゃけて言い訳してみました。
 ご不満でしたら書き直しいたします。

 なにはともあれ
 涼風雫さま、リクエスト有り難う御座いました!



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