妹太

□パズル
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あのアホ伝説は犬が好きだと公言して止まないくせに、その性質はどことなく猫に似ている。

気まぐれに立ち寄っては僕の生活をかき乱し、
気まぐれにかまってほしいとアピールしては僕の中身をかき回す。

そのくせこちらがその気になれば極稀ではあるがするりと逃げていくこともある。

つくづく身勝手な猫科な男なのだ。

「妹子妹子!
 ほうら、隋のお菓子だぞ!」

珍しい渡来の菓子を持ってジャージ男は僕の職場にやって来た。

折悪しくというか、何故か僕の同僚は公務で出払っている。

恐らくはこのアホ摂政が無駄に権限を振りかざしているんだろう。

問いただすと、あっさり是の答えが返ってきた。

「だってさ、取り分減るじゃん」

「だったら一人で食べればいいでしょうが」

「妹子はやっぱり芋だなあ」

一瞬例のウザったい顔を作った後、珍しい満面の笑みで太子は言った。

「妹子にも食べてほしいからに決まってるだろう。
 二人で山分けだ!」

キラキラとした美しい色のそれ。
このアホ伝説が好きな花を象っている。

ずいっと差しだれたそれを口に含むとかなり甘かった。

口の中でボロボロ崩れる。

「うまい?
 ねえ、美味しい?」

「これ甘いですねかなり」

「どぉれお味見だな」

ちゅ

味覚より
視覚より
聴覚が先に反応した。

遅れて全てが反応する。

案外滑らかな舌

長い睫

いつものカレー臭さ

味覚は僕より太子が感じているだろう。


「ん、おいし」

ご満悦の表情が言った。

「あ、あんた、バカでしょ?」

「なんでー?
 妹子とお菓子を一緒に味見出来る名案なのにぃ」

全く、もう
このアホ摂政が!

シンメトリーの顔は、満足している子供の顔を崩さない。

僕はその口に菓子を放り込む。

「今度は僕が味見します」

「妹子顔真っ赤だ、とうとう焼き芋になるんだなっ」

「なりません!
 …ジャージの色がうつったんですよ」


二回目のくちづけはやっぱり甘いものだった。





うわあ
妹子真っ赤
私は平気だぜ!

摂政ポーカーフェイス!

聖徳漫画スマイルの次に大変だけど。

最近な、犬飼いたいって衝動があんまりなくなったんだあ
そりゃワンちゃん大好きなんだけど

もっと可愛くて
赤と栗色で
手なづけにくい奴が傍にいるから。

うわお
私恥ずかしー
妹子には内緒
倭国トップシークレット

これはあれだ!
パズルのピース
私の隣は絶対妹子、お前なんだ。


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