突発物語

□守る側の証、護られる側の決意
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「燐、それ綺麗だね。どうしたの?」

 祓魔塾での授業が終わり、後ろの席に座る泉美と話していた時だった。燐は左隣に座っていたしえみからそんな声をかけられた。しかし、『綺麗』と言われた『それ』の意味がわからず、しえみに疑問を返すことになった。

「なぁしえみ、『それ』ってなんのことだ?」
「そのピアスのことだよ。昨日までついてなかったし、綺麗な色してるからどうしたのかなぁって。」
「ピアス?」
「あ、ホンマや。奥村くん、右耳にピアス開けたんやね。」
「なんやお前まで開けたんかいな……。」

 その時、帰ろうとして近くを通りかかった志摩が燐の疑問に答え、勝呂はいつも以上に顔をしかめる。燐は志摩の言葉を確かめるように右耳を触ると、確かに金属の『何か』が二つ、耳についている。しかしそれは燐にとって全く身に覚えのない物である。そこにある存在を確かめるような行動と戸惑っているような様子に、周囲の者達もただ事ではないと思い始める。──泉美の顔が少しひきつったことには、誰も気づかない。

「燐、どうしたの?」
「あ、いや……今気づいたんだよ。これ。」
「はぁ? それ自分で開けたんとちゃうんかいな。つーか今の今まで気づかへんかったってどんだけ鈍いんや……。」
「うるせーなっ!! つけてる感じしなかったし、鏡なんか見ねーし。そもそもピアスなんか買う金はねぇ!」
「そんなん胸張って言うこととちゃうやろ……。」
「まぁまぁ坊。ちゅーことは、そのピアスは他の誰かからつれられたっちゅーことやんな?」
「おぅ。俺、開けた覚えねーし。」
「それやったら奥村くん……気ぃつけた方がええよ。」

 その時、今まで黙っていた子猫丸が口を開いた。その声音は、真剣で深刻なものだった。

「そのつけ方、他の人からやられたんやったら、奥村くんの身が危ないかもしれまへん。」
「? どういうことだ?」
「前、インターネットしとった時に見かけたんです、ピアスのつけ方にも意味があるて。右耳に偶数個開けるゆうんは、『護られる者』の意味……本来は女性にやるもんなんです。」
「ええっ!?」
「男性の場合は左耳に開けるのが本当です。これには『守る者』という意味があって……女性の右耳と合わせるとその二人が対になってることを表し、いわば結婚指輪と同じ意味を持つそうです。」
「うっわ──……そりゃえらい重いなぁ……。」


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