ぴゅあ工房 vol.1
□そこにある幸せ
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「…ごめんね…望美ちゃん…」
───何言ってるの?景時さん?!
…声が出ない…景時さんが行ってしまう…
──景時さんっ!!
「ダメ〜っ!!!」
望美は振り絞る様に叫ぶ、自分の声で目を覚ました。
「望美…ちゃん?」
夜明け間近の薄明かりに、愛しい人の姿が心配そうに覗いていた。
望美の頬は涙で濡れていた。
「すごくうなされてたよ、大丈夫?」
望美の頬を景時の指が優しく撫でる。
「…夢?」
「よっぽど酷い夢だったんだね〜急に大きな声出すからびっくりしたよ〜」
「景時さんっ」
望美はしがみつく様に温もりを離すまいと、景時に抱き付いた。
「望美ちゃん…」
景時はそんなを望美を両手で包み込むと、ゆっくり布団に沈めた。
望美は乱れた着物を整えながら、体を起こすと世界が回っていた。
「あれ…?」
泣き寝入りしたせいなのか…頭が重いし、瞼が痛い…オマケに悪寒がしてきた。
「…ダメだ…」
望美は再び床に入って倒れ込んだ。
「ええっ望美が風邪〜?!」
届け物をしにやってきた朔が、玄関先で驚いていた。
「ん〜かなり熱があってさ〜さっき薬湯を飲んだから、今寝てるんだよ」
「…兄上…まさか」
「何?」
朔は真っ直ぐ景時を見るとボソリと言った。
「…やや…とか?」
「え、え〜っ…ち、違うと思うよ〜まさか…」
景時はズバッと尋ねる妹に、タジタジになっていた。
「まさか〜じゃありません!兄上はどうしていつも呑気なんですか!母上を呼んで来ますから!」
朔は勢いよく飛び出して行ってしまった。
…ややって…オレ…
景時は、急に鼓動の早くなった心臓を押さえた。
眠る望美の側に座り、望美のオデコの髪をそっと撫でると、望美はうっすらと瞳を開いた。
「…ん」
「あ、起こしちゃったかな?…大丈夫?」
「…ごめんね〜景時さんご飯食べた?」
「も〜そんな心配しなくて良いんだよ…」
景時は優しい望美の気持ちに微笑いかけた。
「…なんか変…景時さん?」
鋭い突っ込みが望美から飛ぶ。
「…いや…さっき朔が来たんだよ〜」
「あ、そういえば…で、朔は?」
「う〜ん…」
景時は言いにくそうに、頬を掻きながら望美から視線を外す。
「…何?言えない…事?」