『コーヒーと紅茶、どっちがいい?』
ある日のある日常、普段と何ら変わりのない会話。パーティーに組みこまれやすい戦力の二人が、こうして丸一日のんびりとした時間を過ごすことが出来るのは稀で。ぼんやりと窓の外を眺めていたロックは曇の切れ間から覗く陽の光に、目を細めながらこう答えた。
『…どくだみ茶。』
聞いたことのないその「茶」に、セリスは首を傾げる。
二人だけの、二人しかいない大切な空間。折角なので楽しませて頂こう。
ロックはセリスの返しがまた好機だ、とばかりに笑う。
『どくだみ茶、が飲みたい。』
きっと、セリスはどくだみ茶なんて知らない。ただ、それをその事実を悪戯に証明したいだけ。
『知らない?どくだみ茶。』
ここぞ、とばかりにロックは堪えきれずに更に笑った。
『毒?なの?』
『毒じゃあない、毒を消し去る効果がある。』
どくだみの葉を日干しさせること数日、煎じて普通の茶と同じように煎れればいいだけ、それだけの「茶」である。普通の「茶」となんら変わりなどない。
『何かの毒を消したいの?それとも今毒に侵されているの?』
セリスがまた、それを生真面目に答えるものだから、ロックは更に笑いたくて仕方ない。
『セリス。』
『何?』
ククク、と笑いを溢すとロックはセリスの頬をつう、っと撫でる。
『セリス、の存在が毒みたいなものかな』
『…は?』
分からなくていい、セリスが分からなくても全く問題はない。

毒に侵されるのも、これまた一興だ、と感じることが出来るのだから。


END





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