scene 2
 ───living room...




 やさしい風が、カーテンを踊らせる。
大きな硝子扉から木漏れ日が部屋のなかに射し込む。
部屋中に漂う彼の気配が頬を撫でる。




「次はいつ出掛けるの?」

 二人掛けのベージュのソファーに座って地図を眺めるロックに、背後から問い掛けると、彼は振り返ってとても幸せそうに微笑んだ。

「まだ考えてもない。とりあえず当分はお前とゆっくりするさ」

 耳に届く彼の言葉はすべて優しくて、心地よい。


「旅もいいけど、お前と過ごす時間の方が大事だからな」


 バンダナが巻かれていない彼の前髪が風にゆれる。
胸が苦しい。

 こんなにもたくさん…抱えきれないほどの想いをくれる彼に、何かをかえせているのだろうか。

 言葉をくれるのも、手を握ってくれるのも、抱き締めてくれるのも、やさしいキスをしてくれるのもいつも彼。
 あられもない声を出すほどの快楽をくれるのも、「離さない」と言って所有の痕をつけてくれるのも、唇が腫れるほど深く激しいくちづけをくれるのもいつも彼。

 自分は何もせずに、彼の想いを受けとめて、自分も同じだけ想いを伝えた気になってる。


「またなんか変なこと考えてんだろ」

 どきりとして顔を上げると、彼が微笑みを曇らせないままに手招きしてきた。
促されるままに彼に近付き、少しだけ彼から間を空けてソファーに腰を下ろす。

「なんだよこの間は」

途端。
甘く、溶けてしまいそうな彼の瞳が近付き、そのままキスをされた。


優しい彼の指先が優しく私の手を包み込む。





───next scene




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