オッドアイと元素記号
□元素記号は高校生
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家を出て、赤い自転車にのり、ペダルを思いっきりこぐ。
中学の頃から使っている、愛着のある自転車。
泥除けが曲がっているこの自転車は、規則的に変な音を立てる。
けれど、それが耳に心地よい。
つめたい十一月の風に身を竦めつつ、クリプトンは新しい学校に続く角を曲がった。
+元素記号は高校生+
親友であるキャスコと一緒に通っていた中学校とは、全く逆の道。
朝や帰りに出くわすこともない上に、クリプトンの帰りが遅いので、最近は彼と会う機会が極端になくなっている。
キャスコは、来年は全寮制の航空学校に入学するつもりだといっていた。
もっと会う時間が減るのかと思うと、何だか哀しい。
英語が達者な友人が数人しかいないため、クリプトンは何かと苦労することが多かった。
話しても伝わってくれない。
相手が何を言っているのか解らない。
クリプトンはそんなちょっとした疎外感を、いつでも心に持っていた。
坂道をのぼると、見えるのはこの街の景色。
ゴミのような、しかし緻密な灰色の集積体はいつでも賑やかで、そこにクリプトンの居場所がある。
赤褐色の髪を靡かせながら、クリプトンは全速力で坂を下りた。
灰色の建造物が立ち並ぶ、市街地。そこにクリプトンの学校がある。
季節外れのクリスマスソングを訊きながら、クリプトンは学校へ向かう最後の曲がり角を曲がった。