オッドアイと元素記号
□オッドアイと元素記号のsolitude
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―――新しいクラスには、居場所なんて最初から用意されてなかった。
新学期になってもう一ヶ月がたとうとしている。そんな今、俺は完全にクラスから孤立していた。まあ、それもいつものことだけど。
去年も一昨年も、俺はずっと独りだった。イタリアが恋しくなることもたくさんあった。それでも、去年までは一つ上の学年に、俺のことをちゃんと解ってくれる人がいた。
陽気で優しくて平和で友好的で、ちょっとドジな理科オタク。親友なんだ、あいつは。あいつが卒業した今、俺はとうとう学校からも孤立した。
今は退屈な昼休み。誰も話しかけてくれなくて、実はちょっと寂しい。
退屈しのぎに携帯を引っ張り出して、俺より一歳年上に産まれやがった理科オタクにメールする。
from Casco
subject クリプ
退屈。今ヒマ?
たったそれだけの短いメールだったから、すぐに返信が来る。
俺はメールを開いて、それから頬杖をつきながら少し画面をスクロールする。
from KRYPTON
subject CASCO
ヒマ。数学は眠いよ。そっちは?
三文メールだよ。まあ、俺は二文だったしクリプは一文多く返してくれたんだけど。
いつもこんな感じ。誰も話しかけてこないから俺はいつも独りで席について、メール打ってる。
そしてクリプは必ず、俺がしたメールをちょっとでも長くして返信しようとしてくれる。
俺の中にある空白を埋めてくれるのは、いつだってクリプだけなんだ。
from Casco
subject あー
バスケやりてえ
from KRYPTON
subject Re:あー
わかるよその気持ち、僕も今浮いてるからね。
なじめないなぁこのクラス。去年に戻りたい。
ほら。たった一文送っただけでも俺の気持ちをすぐ理解してくれて、励ましてくれようとする。同感してくれる。
クリプって、そういう優しい奴だ。
from Casco
subject Re:Re:あー
もどれないだろ
優しいクリプに対して、諦めきった俺。
どうせ、毎年こうだったんだ。今年になって何が変わるということもないだろ。時は戻せない。
from KRYPTON
subject Re:Re:Re:あー
うん、戻れないよ。
だけど、今のクラスになじんで
去年みたいに楽しく過ごすことならきっとできるよ!
ちょっとだけ頑張ってみない?
返ってきたメールを見て、ため息をついた。
いいな、クリプは前向きで。
丁度このメールが来たとき、昼休みは終わった。