オッドアイと元素記号
□元素記号、卒業三日前
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何かが変だと感じた。
通常なら暖かい毛布に包まってるはずの肩は冷え、心なしか身体が傾いているような気がする。
布団を肩までずりあげようと思ったが、手の届くところに布団がないので仕方なく起きることにした。
今日はまだ平日だから、当然学校にいかなければならない。
キャスコは重たい身体を上げてベッドから這い出そうとし、鈍い音を立てて床に落下した。
今日は特別寝相が悪かったのか、キャスコはベッドから落ちる寸前のままねていたのだ。
痛みに顔をひきつらせながら、何気なく前方を見やる。
目覚まし時計が二つ、それぞれ違う時刻を指してころがっていた。
起き上がりながら手を伸ばし、それらを拾う。
一つは六時三分、もうひとつは七時二十分と十六秒を指して止まっている。
キャスコは自分の寝相の悪さに自嘲の笑みを浮かべ…… それから凍りついた。
急いで居間へと駆け下りる。
テレビで時刻を確認すると、七時四十分だ。
着飾った女子アナウンサーがどこかの山林付近で、何かの事故について詳しい説明をしている。
何の事故だかしらないが、キャスコは事故よりも事件よりも大事なことのために急いでいた。
急いで髪を撫でつけながらテーブルにおいてあったパンを二口くらい食べて、すぐに顔を洗って歯を磨く。
そして自分の部屋に戻ってパジャマをその辺に脱ぎ捨てて、制服を着て鞄を手に持って階段を駆け下りる。
最悪だ。
今日は全校集会があるため、いつもより十分早く学校に来なければならなかったのに。
家を飛び出すと、まばらではあるがまだ生徒が登校中だった。
しかし彼らは一様に急いでいる。キャスコもすぐに走りだし、あと何分あればつけるだろうとぼうっと考えながら学校を目指した。