朝の光が射してるのか射してないのか定かではないものの、ぼうっと白くテント内が明るんできた。
ザックスは目覚めると隣に寝てるクラウドに軽く口づけした。

「う〜〜ん・・・」白んだ薄明かりのなかでクラウドの目が開いた。水色の透き通った色が深みを増し、底から煌いているようだ。
雪明りが似合うヤツだと思ってしばし眺める。

外はどんなことになってるのか少々気が重くなった。

クラウドが跳ね起きた。

「テント、埋もれてるよ・・・」

見上げるとテント上部がかなりたわんでいて、上にかかってる雪の重さが想像出来る。

「こりゃ、掘って出ないとな・・・」ザックスが上を向いてつぶやいた。

下から叩くと少し雪が動く。

「なんとかなるさ。」ザックスは身支度を整えると出入り口内側のジッパーを開けた。半身出すと外ジッパーを開け、雪を掻き分けた。

幸い風下に向いた入り口はたいして埋もれてなかったので雪のドームから顔が出た。
見渡すと一面真っ白で、所々にある雪の山は各自のテントなんだろう。

「雪が入ってきた!」と中からクラウドが叫んでる。

「出て来いよ、すげえぞ。」ザックスは雪を掻き分けて表に出ると声をかけた。
誰かの荷物の中に簡易シャベルがあったはずだ。


テントから白いジャケットを着たクラウドが這い出てくる。

「うわ!これはいいね。真っ白だ。」

「何がいいねだよ・・・参ったよ。」ザックスはクラウドをちょっと睨むと両腕を組んで空を見上げた。もう雪は止んでいて、雲の切れ間

からうっすっら光が漏れている。

「昼前は多分降らない・・午後はわからないけど。」クラウドも空を見上げながら言った。

「本当か?」ザックスが確認するとうなずいた。

「しょうがねえなあ・・・テント畳もう・・・」

なんとか二人で協力してテントを掘りおこし、荷物を整理して畳む。
ターフを張り終わるとぱらぱらとみな集まって来た。
埋もれてるテントを掘り、全員そろうのに時間がかかった。朝の挨拶を交わしながらも皆雪を嘆いている。
ザックスがうんざりして
「熱いシャワーでも浴びたいもんだ。」と言うと、ちょうどやってきたミシェルが異口同音にそう言ったので、周りは皆ふきだした。

朝食はテントを畳んだものから各自摂るよう話し、断熱シートの上に座り込むとザックスは地図を広げた。
ミシェルがのぞきこんでくる。

「オレたちはこの上のルートを辿って、連中の背後に回る。お前はランチャー撃ってる横から派手に暴れてくれ。目をひきつけてくれればいい。うまくいったら、ランチャー何機か奪ってもらえるとありがたい。」

「了解した。オレの小隊とあと数人いればいいだろう。目立てばいいんだろう?2ndと3rd何人か連れていこう。」
ミシェルは言葉を切るとザックスをじっと見た。

「いい援護が欲しい。クラウド貸してくれ。」

ザックスは一瞬息を呑んだ。

「わかった。ストライフ伍長、ランチャー撃てるな?」

横で無表情に聞いていたクラウドは顔を上げると

「はい、実戦で撃ったことはありませんが、演習ではかなり使ったので撃てると思います。」と答えた。

「ではブランシェ少尉の指揮下に入って、下方からソルジャーの援護及び奪取したランチャーをウータイのランチャー隊に撃ち込め。混乱させろ。ほかにもランチャー撃てる部下をつける。」

「オレ達は背後から突入する。砲撃が止めば下方の第三中隊も動けるようになるだろう。動ければレオンたちもこっちと協力できる。連絡つけるように下にも誰かやる。そういうことでいいな?」

「じゃあ朝食後に部下に作戦を話しておく。オレ達が先行出発してからタイミング見てくれ。よろしくな。」
ミシェルはそう言うとザックスに手を振って、自分の部下の方へ歩み去った。

「あの野郎・・・」ザックスは周りがみな立ち去ると小さい声でつぶやいた。

「ザックス、オレが陽動隊に加わるのは作戦として仕方ないよ。別に他意はないんじゃない?」
「イヤ、オレはほぼ他意とみた・・アイツの隊にだって、援護射撃できるのは何人もいるんだから・・・」

クラウドはザックスの背中を軽くたたくと、

「考えすぎだよ。」と言い、朝食用の簡易コンロに火をつけた。



一応温かいものを腹におさめ、落ち着いたところで装備を整え出発することになった。
ミシェルの隊が先行出発なので、クラウドもそちらにいる。
スナイパーライフルを肩にかけてミシェルと何か話してるのが見えた。
クラウドが笑った。
クラウドは滅多に笑わない。特に他人には、不必要なほど無表情で接するので少々評判が悪い。
それがミシェルには気を抜いているのか結構感情を表してるように見える。
二人の間に何かあるのは確信してる。もう考えないって決めたのに、クラウドが手元から離れてミシェルといると穏やかでない気持ちになる。
ザックスは溜め息をついた。もう何回めの溜め息だろう。
ともかく先行の連中が無事にミッションをこなしてくれることを祈ってよう。



雪はかなり深く、場所によっては雪溜まりを作りうっかりすると体が沈みこむ。
分岐点から別れてウータイの砲撃位置の高さの小道に出るためには一時間は歩かないといけない。

「クラウド、向こうの砲手が見える位置に来たら、向こうに気づかれる前に撃ってくれ。砲手を一発で頭撃ちぬけるか?」

ミシェルが隣に来て話しかけてくる。

「いい場所に潜伏できれば大丈夫だと思います。ランチャーには多分二人ついてますから、続けて二人撃つようにしましょう。」

「頼りになるなあ。」ミシェルに肩を叩かれた。その後顔を近づけると、

「夕べはお楽しみだったみたいだな。匂うゼ・・」と耳元で囁いた。

クラウドの頬に血が上った。

「別にオレには関係ねえ。気分がすっきりしてスナイパーとしての集中力が高まってくれるなら上等だ。」

そう言うとざくざくと雪を踏みしめて前に行ってしまった。


しばらく行くと道が湾曲してるところに出た。ミシェルが皆に留まるよう命じた。
斥候を出し、様子を見させてる。

斥候が戻ってミシェルに報告するとミシェルはうなづき、クラウドに斥候といっしょに先に行って狙撃の準備をするよう指示し、ソルジャーには戦闘準備をさせた。

「いいか、手前の砲手を出来たら2〜3人続けて撃ってくれ。オマエの銃声が聞こえて一分以内につっこむからな。オマエは狙撃場所特定される前に移動しろ・・」
他のスナイパーにはソルジャーが突っ込んだ後の援護射撃と弾幕張るよう命じた。

小道をゆっくり進み、向こう側が見渡せるところで伏せた。
この小道はこの後湾曲しながら崖の縁を廻り、ウータイの砲撃隊がいる高台につながっている。
ここはちょうど曲がり角にあたり、向こうからはこの後ろ側の道は見えない。クラウドは道の脇に伏せると遠くに見える砲撃隊を双眼鏡で観察した。下に向かって撃ってる連中も何人かいる。雪と混じった土埃が立ってるのが上からもよく見える。塹壕が掘ってあるが、あそこにいるのがレオンたちの中隊だろう。
ランチャー89には装填手がもう一人ついている。じっくり見ると、使ったことのある型なので、一人でも操作できそうだ。
しばらく見渡して、ちょうど射程内でよく見える辺りを見当をつけ、スナイパーライフルに持ち替える。

じっとチャンスを狙い、標的に照準を合わせる。十分いけそうだ。
トリガーに指をかけ一人目の頭部がスコープの中心に来たところで撃った。

ぱん!という音が雪山に響く。
続けて砲手の横にいた装填手を撃つ。

近くにいる砲手が驚いてこちらを振り向いたところをまた撃つ。
すべて一発で頭を撃ちぬけた。動揺が広がらないうちに素早く立て続けに6人撃った。伏せてる脇をミシェルたちが走りぬける。
陽動隊の一斉攻撃だ。

→NEXT(ドグーラ 9)

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