「お〜〜い!!!」ミシェルが大きな声を出して手を振った。
ザックスの視線がそらされた。

本隊に近づくとミシェルの部隊の部下がこちらに駆けてきた。

「少尉!!ご無事で。」

クラウドは、ミシェルが何人かの部下達と抱き合ってる横を通り過ぎ、さくさくと雪を踏みしめて本隊から少し離れて一人立っていたザックスに近づいた。

「中尉、遅れて申し訳ありませんでした。ただいま戻りました。」ザックスの前で敬礼をする。

「よく無事で戻った。ご苦労さま。」ザックスが答える。

会話はそれだけで済んだ。

見えない手がさしのべられ自分を愛撫するのを感じる。幻の手が髪を撫で、頬を触り、唇をなぞる。
自分はひっそりと吐息をつきつつ、それを受け入れ抱きしめる。

ザックスの瞳の中には苦悩と愛情がせめぎあってる。
後で。
後で。クラウドも目で答える。


「遅れてすまない、ザックス。どうなってるか教えてくれ。」
ミシェルがやってきた。

「ミシェル、ご苦労様。無事で何よりだ・・・これから本道の第三中隊の援護に行く。第三中隊はこの先の行き止まりの平地で挟み撃ちにあっている。左右上方からの砲撃で足止めを食ってるんだ。塹壕を掘ってしのいでるけど、弾薬と食料が尽きるのは時間の問題だな。砲撃は89mmランチャー。ウータイ側から山超えで運んできたヤツみたいだ。コイツを撃ち込んでる連中を撃破する。」

「了解だ。これからこの峰の上方に移動して上から連中を狙おうってことか。」

「ああ。うまく行けば気づかれずに背後から攻撃できる。囮隊が下方から軽くかく乱してくれると助かるんだが、やってくれるか?」

「こっちの分隊にいるソルジャー1stはオレとオマエの二人だけだ。オマエが上から、オレが下からに別れるのが妥当だな。」

「もう一日行くと分岐点だ。そこで別れよう。」ザックスが言うと、

「第三中隊ってレオンたちのところだな・・・相当人数がいるはずだが。」ミシェルが眉をひそめて言う。

「あの辺りは無線も通じない。斥候の報告だと身動きできないで膠着状態らしい・・・」

「動けば上からズドンか・・・やっこさんたち弾も食料もそろそろ尽きると踏んでるな。」

「ともかく先を急ごう。見つからないように大回りして行く。この雪じゃオレたちだけじゃなくて、敵も難儀してるだろうが。」
ザックスは部下に行軍を指示すると、ミシェルに向き直った。

「クラウドをありがとう。無事でよかった。」ザックスの表情はミシェルには読めない。

「いや、雪がなければ追いつけたかもしれなかったが、夜の移動は危ないしな。」ミシェルもいつもと変わりない。

「ともかくここからが正念場だ。よろしく頼む。」ザックスに正視され、ミシェルも真面目な顔でこたえる。

「任務を遂行して無事に戻る・・・最優先事項だな。」二人は握手を交わした。



ふたたび隊列を整え、ひたすら山を登って行く。
林はだんだんまばらになり、いじけたような痩せた木が雪の中に散在して風に震えてる。
空は再び暗くなってきており、昼間なのに気温が下がりつつある。

ザックスは先を歩きながら、後ろからクラウドが追いついてくるのを足音で感じ取っていた。
クラウドは人前では業務上の報告以外、なかなか近づいてこない。本当に用心深い。

無事にもどったクラウドを走って迎えて思いっきり抱きしめたかった。
報告のため近づいてきたクラウドからは、ミシェルの匂いが濃く漂い、思いもかけない嫉妬の念に苦しめられる。
クラウドを信じているし、万一何かあったとしてもそれで揺らぐような気持ちではないと思っていたのに、匂いだけでこんなに焼け付くような苦しさがこみあげてくるとは・・・
自分はこの分隊に責任を持たないといけないし、任務は遂行されないといけない。
考えまい、と思ってるのに・・・

後ろから追いついたクラウドがザックスの真横に並び、質問をする。

「中尉、ランチャーは何機くらいあるんですか?」

「斥候の報告だと、50機以上。結構な数だ。こっちの右側斜面でそれだけだ。どれくらい距離があれば射手を狙い撃ちできるか?」

「射撃位置や天候によると思いますが、500mあれば十分でしょう。問題は標的がきちんと見えるかどうかで。」

クラウドはミシェルの匂いを濃くまとっている。肌を密着させた時特有の重い匂いが首筋のあたりに漂う。
ミシェルの髪の匂いもする。胸が重く詰まってくる・・・

「また後で相談しよう。」ザックスが言うとクラウドが目礼した。
視線が一瞬からんだ。クラウドはいつもと変わらぬ愛情こもった眼差しでザックスをちらとみつめる。

もちろんそんなわけがない。クラウドが自分を裏切るなんてこと。わかってるのに疑う心が生じそうになる。
でも少なくとも自分の知らない何かを二人が共有してる。
クラウドに聞くわけにはいかず、ましてやミシェルに確認するわけにもいかない。
暗い嫉妬の念を追い払うように深まる雪の中足を速めた。
空もどんよりしてきており、今夜はまた雪になりそうだ。

東峰頂上に向かう道と回り込んで下方に向かう道との分岐近くに差し掛かった。
もうこの辺りは大きな木もなく、地を這うような痩せた木々とまばらな潅木に雪が厚く積もってるだけだ。
荒涼とした雪の坂が上方へと続く。
ここで一夜を過ごし、朝方二手に分かれる予定だ。基地を出て西方向に進んだ分隊がどうなったかわからないが、
先に到着したほうから攻撃を開始することになっている。

斥候を放ち、周辺を探る。ウータイ側の斥候に見つからないよう遠回りしてここまで登ってきたので、皆疲れているようだ。

寒い、とても寒い。気温はかなり下がっており、雪もちらつきだした。
ザックスは、見張りに立つものの順番を決め、早めの食事と休息を命じた。本当に雪はいやだ。そう思ってうんざりと空を眺めていたら、少し離れたところで同じように空を眺めてるミシェルが目に入った。アイツも雪がキライらしい・・・

白い雪山用のターフを張った下で夕食にする。
温めたレーションをかきこみ、カロリーアップのための簡易糧食も開ける。甘くてナッツ臭い。
そろそろテントを設営しようとハーフテントを出したら、クラウドがもう隣に来ていて、無言で一緒にテントを張った。

山の上方から身を切るような冷たい風が吹き降ろしてくる。
部下達に風下にテントの出入り口を向け、なるべく潅木などの陰にテントを張るよう言い渡す。
今夜はかなり雪が降るかもしれない。



ようやくテントの中に落ち着き、冷えて痺れがきそうな足を伸ばした。
クラウドが入ってきて、
「今夜は相当降るよ。」と入り口の二重ジッパーを閉じながら声をかけた。

「クラウド・・・」もう我慢の限界だ。
手をひきよせ、体を包み込むように抱きしめる。いいんだ、ミシェルの匂いがしてたって。こうやって抱きしめてれば全部オレの匂いになる。ほとんどマーキングのようだと思い、自分で苦笑する。

両手で顔をはさみこみ口づけする。やわらかで熱い舌がそっと様子を伺うのが愛しくて強く吸い上げる。

上着を脱がし、暖かい胸元に口づけする。この甘やかですべらかな肌・・・もうテントの中が薄暗く物がほとんど見えなくなってる。乳首を探り当てそっと舐めると吐息が聞こえた。ミシェルの匂いはこの辺りからはまったくしない。ザックスは薄闇の中で笑った。胸のつかえが少し取れた。

「雪が降り出したから、これくらいの音は聞こえない。」ザックスがささやくとクラウドが両腕でザックスの頭を抱きかかえ胸に押し付ける。

ひきしまった平らな腹部にある臍を鼻でみつける。脇腹から熱い腹部を愛撫し、なんども吸い上げるように口づけする。
「腹にキスマークつけたっていいよな。」ザックスがまた小さい声で言うと承諾のように髪に手を差し入れてくる。
ズボンの上からさぐるとクラウドが固くなっているのがわかる。ざらついた軍服の上からつかむとびくりと身もだえした。

「今日はオレがしてやる・・・」そっとファスナーを下ろし、勃ちあがったクラウドのものを口に含んだ。
「うぅぅ・・いいよ、そんな・・・」テントの中に荒い息遣いがひびく。
ゆっくり先から舐めていくと体が震えだす。手を使って軽くさするだけでさらに硬さを増し、張り詰めてくるのがわかる。
「少し早すぎない?」ひっそり聞くと闇の中で首を振り、
「ザックスにそんなことされたらおかしくなる・・」と密やかなかすれた声がかえってくる。
自分自身も高まってきて服の下で頭をもたげている。ファスナーを下げ、右手で自分のものを握ると、もう一方の手でクラウドのものを弄りながら口に含んで舐め吸い上げる。口の中のそれは張りを増すとどくんと動き苦味のある独特の味が口の中に広がった。

「ああ・・・悪い・・・」ほとんど吐息でかすれた声でクラウドがあえぐ。
「寒くない?」今こんなことを聞くのも見当外れかとも思ったが、半裸のままのクラウドが気になった。

「ぜんぜん。暑い・・・ザックスは?」

「オレも寒くない。」

「ザックス、終わってないだろう?交代しよう・・」
クラウドは体の向きを変えると、ザックスの体に手を這わせた。

「ザックスも脱いで。」ザックスは上着を脱ぎ捨て
「ちょっと寒いな。クラウドがぴったりついててくれないと。」と言うと胸を密着してきた。

結局二人とも服を脱ぎ捨て素肌でしっかりと抱き合った。
暖かい肌の感触を互いに貪るように味わい、絡み合ったまま狭いテントの中で口づけを交わした。

「敵襲あったらどうするのさ?もしくは誰かが緊急報告に来たら・・・」
クラウドがサックスの肩に顔を埋めてそんな事を言う。

「心配性だね、まったく。オレの勘じゃあと30分は大丈夫だ。」
ザックスが言うと呆れて、
「根拠ないくせに・・」とぶつぶつ言う。

ザックスはクラウドの背中にのしかかるとうなじに噛み付いた。
こらえられなくなって腹の下でクラウドがうめき声をたてる。その顔を想像すると体の芯から熱くなり、自分の指を舐めるとそっと挿れる。
「ダメだ・・誰か来たらどうするんだよ・・・」声とは裏腹にゆっくり体を開きつつある。

両手をクラウドの腹に回しうつぶせのまま体を引き上げ、膝をつかせると、徐々に挿れていく。

クラウドは両手をついたまま下を向いて声をたてないよう自分の腕を噛んでいる。闇の中に浮かび上がった姿が淫靡で扇情的だ。

外は風も吹き出したのか、テントの被布が震える音と、風が吹きすさぶ音が混じる。びしびしと氷の粒か雪の塊かが屋根の部分に当たる。

「大丈夫だ、声たてても。外は凄い風だから・・・」背中を密着させると耳の後ろから囁く。

息遣いが荒くなりクラウドの背中から細かい震えが伝わってくる。熱くぬめりながら締め上げる。
腰の動きとともに両手に抱える体が軽く跳ねる。
痺れるような開放感とともに体内から精を解き放つ。腹の下の体も動きをとめる。

胸を背中に密着させると自分の心臓が踊るように動くのを感じる。首筋を舐め上げ、頬に口づけする。

「そのままでいて・・」ザックスは片手を伸ばすと、荷物の中からタオルをひきだし互いの体を拭いた。
「タオルだめにしていいの?」クラウドがまた些細なことを心配してくる。本当にうちの妻は細かいな、なんてザックスはついデンゼルが言った言葉を思い出し一人笑いしそうになった。

「いいんだよ。丸めて雪の下にでも捨ててくから。」

カンテラを少し明るくするとクラウドがテント内を片付けだす。まめだな、と思いながら寝転ぶと心地よい眠気が襲ってくる。

「ちゃんと寝袋に入らないと・・・」言われてしぶしぶ寝袋に入る。
クラウドも寝袋に入ると隣にぴったりくっついてくる。

もうミシェルのことなんかどうでもいい。ここにこうしてクラウドといるだけで。
クラウドの独特の香ばしいような髪の匂いを胸いっぱい吸いながらザックスはかなりすっきりした気分で眠りについた。

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