前線基地で冬用装備を色々受け取った。
簡易テントは二人用で、半分ずつ備品を持ちペアの相手と組んで設営する。
つまり、二人で一個のテントを作るということだ。テントはリバーシブルで、裏は雪山用に白くなっている。
ジャケットも同様にリバーシブル。裏は、雪山でも目立たない光沢のある白だ。

簡易食料も荷物に詰め込んだ。

今回は無線連絡が山の七合目くらいまで大丈夫とのこと。
すごく助かる、前線基地でスクランブルかけてくれるそうで。

朝、大佐から訓示があり、その後各隊ごとに出発した。

ドグーラの三合目あたりまでは、まず敵襲の心配はない。小手調べと言ったところだろう。

本道から外れた、細い道を右に入る。下生えの少ない森の中をゆっくり進む。
低木の茂みががさりといったと思ったら、兎が飛び出し、驚いて逃げていった。クラウドは一瞬撃ちそうになった自分に苦笑した。
少し登るだけで、空気の気配が変わってくる。冷たく澄んだ森の精気にあふれた空気は息をするごとに体の隅々まで満ち満ち、感覚が研ぎ澄まされてくる。
ああ、山だ。雪が降るといいなあ、とクラウドはザックスが聞いたら顔をしかめそうなことを考えていた。

小さい頃から、父親につれられてニブルの冬山を歩き回った。
山の中で吹雪いて身動きできなくなり、雪洞を作って父と二人で吹雪が終わるのを待ったこともある。
父と抱き合って暖をとり世界に二人っきりのような心細い気持ちになったりしたものだ。
それに比べれば、こんなに立派な装備があるのだ、多少の雪くらいどうってことない。



それにしてもウータイでミシェルに会う可能性を考えていなかった自分は甘かったと思ってる。
苦々しい思いでミッドガルでのザックスのいなかった日々を思い出した。
そう、最初はザックスと間違えたんだ。射撃練習をするのに近道をしようとソルジャー宿舎の裏を急ぎ足で歩いていた時、角を曲がったところで煙草を吸っていた人影を見て、ザックスだと思った。

「ザックス!!!」クラウドがその人影に抱きつくと、その男はびっくりしたように
「オレはザックスじゃない・・・」とクラウドの体をそっとひきはがした。

クラウドが見上げると確かに背格好はザックスに似ていたが、全くの別人だ。
慌てて体を離したら、今度は逆にひきよせられた。

「ふ〜〜ん・・・、あの噂は本当だったわけだ・・・」
「オマエ、射撃で賞とったクラウドだな。『氷の天使』か・・・」
そういうと顎に手をあてて顔を上向かせ、まじまじとクラウドの顔を眺めた。

「いいな。綺麗だ。オレじゃダメか?ザックスはウータイに行っちまったぜ?」髪をそっと撫でるとクラウドを抱きしめた。

それほどイヤじゃなかったのは、手の感触がザックスに似てたからと、淋しかったからだと思う。
浅黒い肌、黒い髪。じっとクラウドを見つめる瞳は魔光の蒼。
「今夜、食事つきあうだけ。な?」有無を言わさないその言い方についうなずいた。


クラウドは頭を振って思い出さないようにした。
今は目の前の戦闘のことだけ考えよう。
霧が出るか、雪が降るかしてくれるといい。何も考えなくてすむから。




その日は結局ついに敵とも会わず日が暮れた。
もちろんそれは想定内で、この辺りにはほとんどウータイ兵はいない。
まれに斥候がいる程度だ。

初めて組み立てる新式の簡易テントに皆最初はてこずったようだ。
数人ずつ離れて小グループを作る。
ザックスは自分たちを含め三組、つまり六人でクラウドが選んだ場所にテントを張った。
風が冷たくなってきている。

無煙コンロに火をつけ、戦場用のレイションを温める。またカロリー第一の戦場食を食べる日々が始まった・・・
改善されたそうだが、味気なさに変わりはない。

「明日あたりはお客様と出くわしそうだな・・・」ザックスが沸かしたお湯でインスタントのコーヒーを飲みながら言った。
マズイ・・とつぶやく。

「今日はあまり冷え込んでないから明日は天気が悪いかもしれない・・・」クラウドが自分のカップを眺めながら小声で言う。
ザックスはげんなりした。

「霧がでる?」
クラウドがうなずいた。

「こういう日の次の日は霧がでやすい。濃い霧だと自分の手もみえなくなる。方向感覚も狂うから、コンパスで確認しながら進まないと。」

霧か・・・一応部下にはその可能性を皆に無線で連絡しておいた。ミシェルにも一応連絡する。

「クラウドが言うなら可能性高いな。」無線の向こうでミシェルの声がする。結構近くで夜営してるようだ。

明日は霧の中を進むのか・・と思いつつテントに引き上げた。
テントは細長いドーム型で、小型のわりにはよくできてる。吹雪にも耐えるときいている。
高さは一メートルほどで、中は意外に広く感じる。

クラウドとペアを組めてほっとした。今夜は夜襲もないだろうからゆっくり眠れる。
二人で横になると天井が急に高く感じた。

「クラウド・・」ごく小さい声で名前を呼び、そっと手を伸ばした。
「静かにね。皆回りで夜営してるんだ。」クラウドはさらに小声でささやくと腕の中にやってきた。
抱きしめると温かくクラウド独特の香ばしいような匂いがする。
唇をあわせると、珍しくクラウドから舌を差し入れてきた。どうしたんだろう、テント内じゃ嫌がるかと思ったのに。

クラウドはザックスの舌を吸い、口の中に誘い込むと軽く噛んだり絡めたりしてくる。いつもの彼らしくない積極的なキスだ。
ザックスは思わず吐息をもらすと、唇をそっと離し、クラウドの喉元に顔を埋めて胸元をはだけた。熱い肌の匂いが上がってくる。
ザックスはその匂いに酔ったようになり一瞬我を忘れ、体を持ち上げるとクラウドの首筋に噛み付いた。
押し殺した溜め息を吐くと、クラウドはしばらくあえいでいた。

「ダメだ・・・外に聞こえる・・・」微かな声でつぶやく。ザックスは渋々体を離した。

「そのまま・・・座って・・・」クラウドが耳元でささやくので胡坐をかいて座った。
テントの中はほとんど闇で枕元に置いた微光灯がわずかに周囲を照らしてるだけだ。クラウドにはどの程度見えているのだろう?
クラウドは高ぶるザックスのズボンと下着を下げると屈みこみ、腹部に両手を廻して抱きついてきた。そして徐々に顔を下げると、ザックス自身を口にくわえこむ。突然の思いもかけなかった快感に身震いした。音を抑えているのかひっそり静かに吸いあげ、舐める。
片手を勃ちあがったそれの背側に支えると腹側を下からじっとり舐めあげる。ザックスにはクラウドの白っぽい髪が自分の脚の間で動くのが見えるだけだ。
たぶんクラウドにはほとんど何も見えてないのだろう。
「イキそうだ・・・、いいのか?」一応声を潜めて聞くと承諾のように深くくわえる。息遣いが荒くなるのは抑えようがない。鼓動も早くなっており、自分の耳に響くようだ。
はちきれんばかりに高まり、行き場を求めていた精が一気に吐き出される。
後ろに手をつき体を支える。飲みこんだんだ・・・クラウドはしばらくすると顔を持ち上げ口元をぬぐうと、息を整えた。

「悪い・・・オレだけイッた。」ザックスが言うとクラウドは「かまわない、そのつもりだったから。」と小さい声で答えた。

ザックスはクラウドの頬を両手で挟むとくちづけした。クラウドは足元から水筒を探し当てると、一口水を飲み、ザックスに渡した。

「もう寝ないと明日に差し障る。」クラウドは先ほどまでとは打って変わった冷静な声でつぶやくと、服を枕に横になった。
テントの中は暖かく、心地よい。
「オレたちの体温が上がったから暖房効果だな。」
ザックスはクラウドを引き寄せると腕に抱えすぐに眠りについた。

クラウドはしばらくぼんやり目を開けて闇をみつめていたが、やがてザックスの胸に顔を埋めるようにして眠り込んだ。

→NEXT(ドグーラ 4)

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