ミッドガル雑記;ミッドガルの12ヶ月

□2016年クラ誕!
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夏に入ってザックスと別れた。
理由は……、「太陽が眩しかったから」みたいなよくわからない理由だった。

きっと暑すぎたからだと思う。
その夏はいつにも増して暑く、ミッドガルで省エネ法が成立、かなり強制的にエアコンの温度が規制された。
そこにもってきてあの熱い男が暑苦しく勝手なことをする。

ザックスの好き好き攻撃に圧倒され、クラウドいないとオレは気が狂うだのソルジャーとしての仕事もまともに出来ないだの、すったもんだのあげく、ザックスにひきずられるようにして同棲することになったのが半年前のことだ。

最初は良かった。寒かったから。
人肌のぬくもりなんて子どもの時以来。
「ほら、こんな風にすると気持ちいいだろ?」なんて恥知らずな男がクラウドの初心なところにつけこんで、すっかり体を慣らしてしまい、毎晩同衾するのが当たり前になったのもきっと寒かったからだ。

嫌い……ではない。
でなければあんな恐ろしくも恥ずかしいことは出来ない。
「ちょっと試してみよう」と言われて寒い日に互いに素肌で毛布の下に潜り込んでいた時に、色々試してみた、うっかり。
本当に最初はじゃれてる感じだったが、いつの間にかおかしな体勢を取らされて、
「ちょっと痛いかも」
なんて切羽詰まった声で迫られた時はしまった、と思った。
もうのっぴきならない状況で、日々体を穿たれているうちに「そういう体」になってしまった。
実に口惜しい。
考えてみれば、キスするようになったのが体を重ねるより後というのも、策にはまった感があった。

気付けばまるっきり愛人のような関係になっていた。

そうなってからのザックスはさらに自由気ままに振る舞うようになり、当たり前のようにさかってきた。

倉庫の片隅で、資料室の埃っぽいソファーで、果ては裏庭のベンチで。

殴っても蹴っても全然こたえず、最終的にはクラウドが許してくれるのが当たり前みたいな顔で好き放題されるのには本当に腹が立った。
寝る時は「クラウドの体ひんやりして気持ちいい〜」などと言って、クラウドより明らかに二度ほど体温が高い体をぴったりくっつけてくる。
熱い、暑い、眠れない。汗だくだ。
さらに夜中だの明け方だの、クラウドが寝ていようが関係なくのしかかってくる。
お陰で寝不足でフラフラ。本人は終わると満足して気持ち良さそうにコトンと寝入ってしまう。

その上何が憎らしいって、あちこちいまだにつきあってる女たちにもマメに連絡を入れていたりする。
「だって悪いじゃん、メールに返事もしないなんて」
オレに悪いって思わないのかコイツは!と怒り心頭に達し、ザックスの端末から女の連絡先を全部削除したりしたが、別段怒るでもない。
「連絡先がわからなきゃわからないでどうってことない」とかぬかす。
ミッションにも突然行くから、朝起きたら姿が見えずそのまま一ヶ月梨のつぶて、なんてこともあった。
怒って問い詰めれば頬なんかポリポリ搔いて、「いや、ソルジャーの任務は極秘だから出発日も行く先も口外禁止なんだ」なんて杓子定規なことを言う。
いい加減な男のくせに、こういうところだけはやけに固いのがまたまた憎らしい。
その癖突然ミッドガルに帰ってくるとまたもややりたい放題。
この前は本社で帰ってきたばかりのザックスにばったり会ったらいきなり近くの使ってない会議室に連れ込まれてそのまま事に及んで立てなくなった。

もう心身ともに疲れ果てた。
毎日、毎日振り回されっぱなしだ。

「もういやだ!オレの都合も考えてくれ」
そう言ったらえ?と
「だってクラウド、オレのこと好きだろ?」と不思議そうな顔をされた。
その当たり前、というか自信を持ってるような態度にかっとした。
一度も言ってない、好きだなんて。
「オレがいつオマエの事が好きって言ったんだよ!よく思い出せ、馬鹿!」
怒鳴ったら、急に虚空を見つめ、まるで旧型のパソコンのようにしばらくじいっとしていた。
頭の中でウインウインとデータを確認しているようだ。
「本当だ……」
ザックスが傷ついたような顔をしたので、クラウドの胸はちょっぴり痛んだ。
「もう8月に入るのに……」
訳のわからないことを言っている。

「同棲するなら大人しく家で待ってる女とすれば?」
捨て台詞を残すと、荷物をまとめて憮然と出て行った。

ザックスは虚けたように立ちすくんだっきり追いかけても来なかった。
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