ミッドガル雑記;ミッドガルの12ヶ月

□Here Comes Santa Claus/Silent night Holy night(2011・クリスマス)
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【Here Comes Santa Claus】

まさか、まさか24日にママが入院するなんて……

キュウセイチュウスイエンって何だろう?
パパはたいしたことないから大丈夫だって言ってくれたけど、すごく心配だ。

クラウドは窓辺でカーテンを握り締めてほろほろ泣いていた。



ママは朝から調子が悪そうだった。
いつもなら綺麗な薄ピンクのほっぺがなんだかやけに真っ白で、どうしたんだろう?って思ってた。

「大丈夫。クリスマスのケーキだけは作っちゃわないとね」
そう言いながらよろよろ生クリームを泡立てていたママは、ケーキ作りの途中で立ってる事もできなくなった。
「ごめんね、クラウド。ママちょっとお腹が痛くて」
おろおろするクラウドを心配させまいと、ママは痛々しい笑みをうかべながら仕事中のパパに電話した。
そして…、急いで帰ってきたパパと一緒に車で病院に行ってしまったのだ。

ママが入院して一段落したらすぐ帰るってパパは言ってた。
少しくらい淋しくてもお留守番してないと。
泣き虫だなんてパパに思われたくない。
クラウドは涙のにじんてきた目を拳できゅっとこすると窓辺から離れた。



せっかくのクリスマス、楽しみにしていたケーキも作りかけのままだ。
リビングの真ん中にはママと一緒に出したツリーが、ぽつんとやけに淋しそうにそびえてる。
そうだ、せめてピカピカ光る明かりをつけよう、そう思ったクラウドは延長コードの先をコンセントに差し込んだ。

夕暮れが迫ってきた薄暗い室内に赤や緑のライトが一斉に煌きだした。
クラウドは床で膝を抱えてしばらくソレを見ていたが、かえってますます淋しくなってきて、止まりかけた涙がまたつうっと流れてきた。

一人ぼっちのクリスマスなんて……

床からはひやりと冷気が伝わってくる。
クラウドは抱えた膝に突っ伏して涙をこらえた。
淋しくてもがんばろう。クリスマスよりママの方が大事だ。

こらえてもこらえても涙は溢れてきて、膝をぬらした。

おうちでちゃんと留守番してるように言われたけど、あまりの淋しさに、クラウドはのろのろ立ち上がると、ザックスに会いに行くことにした。

ザックスに会いさえすれば、少しは気持ちも晴れるかもしれない。
ザックスにぎゅってしてもらおう。

いても立ってもいられなくなったクラウドは、そっと玄関を開けると足音を忍ばせてザックスの家のリビングに面した庭を外から覗き込んだ。
(ザックスのママに会ったらなんで泣いてるのって言われるから、庭の方からザックスに声かけよう)

庭の植え込みからリビングを覗くと、ザックスの家ではもうすでに帰宅してきているお父さんと一緒にクリスマスのご馳走を食べているところだった。
ザックスはやけに嬉しそうにクリスマスプレゼントをばりばり開けている。
うお〜〜!オレの大好きなメカレンジャーだ!ザックスの明るい声が窓越しに微かに聞えた。

(邪魔しちゃ悪い)
あんなに楽しそうなのにメソメソ泣いてる自分が入り込むわけにいかない。

(パパが帰ってくるまでちょっとだけ我慢しよう)
クラウドはしょんぼりした気分ですごすご自宅に戻った。

玄関に鍵をかけて二階にある自分の部屋に戻ろうとしたら、パパから電話があった。

「クラウド?一人にしてごめんな。ママは入院したけど手術にはならないで済んだから、これから帰るよ。お留守番大丈夫だった?」

よかった!ママは無事だ!
ここで少しは強いところを見せないと、パパも心配する。
「ボクは大丈夫。ママは?」
「うん点滴したら元気になってきた。2〜3日の入院ですみそうだから、これから帰る」

よかった〜〜!
パパと2人っきりのクリスマスだけど、ママが無事ならいいや。

家中の明かりを全部点け、うんと明るくしたら、気持ちも少し落ち着いてきた。
キッチンでママの作りかけの生クリームをちょっと舐めたりしてたらパパが帰ってきた。
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