ミッドガル雑記;ミッドガルの12ヶ月
□HAPPY BIRTHDAY CLOUD!! 2011/8/11
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【HAPPY BIRTHDAY CLOUD!! 2011/8/11】
「ザックス、暑くない?」
クラウドはザックスの汗ばんだ額に張りついた髪を手櫛で梳いた。
エアコンの調子が悪くてどうも部屋の冷え方が甘い。
夜中に汗ぐっしょりで目覚めたクラウドは、隣ですうすうと安らかな寝息を立てているザックスの顔を覗きこんだ。
彫りの深い顔立ちは昔のままだし、黒くきりっとした眉もクラウドの記憶にあるとおりだ。
引き結ばれた意志の強そうな唇は今にも綻んで、クラウド!と名を呼んでくれそうだ。
目さえ…、閉じてればかつてのザックスだ。
クラウドは溜め息をつきながらその頬の傷をそっとなぞった。
この傷だって昔のままなのに。
ザックスの…、目が開くのが怖い。
いっそ自分と一緒にこうやってずっと並んで寝ていればいい。
ザックスと二人で永遠に眠るのはちょっと切なくも胸迫る誘惑だ。
死んだと思っていたザックスがミディールの地で見つかって、感動の再会らしきものをしてからもうかなりの月日が経つ。
ほんの数回、夢から目覚めたようにクラウドを認めてくれたので希望をもって暮らしていたが、この数ヶ月はまた元の閉じこもり状態に戻ってしまった。
自分も以前魔光中毒で似たような状態になっていたので、なんとなくわかる気がするのだが、ザックスは現実にいるように見えて実はこっちの世界にはいないのだ。
事物は…、わかるようだ。
部屋の中の物は認識してるようで、椅子につかえたり壁にぶつかるわけでもない。
食事も目の前に出せば黙々と食べる。
ただ…、ここにクラウドがいるということがわからないのだ。
いや、クラウドだけではない。人間がわからないと言ったほうがいいだろう。
人の声は聞こえてるらしく、命令には従うが、きっとどこの誰が命じてるかなんてわからないに違いない。
多分ザックスの頭の中は数万人分のわめき声やうめき声でわんわんしてるのだ。その中で命令してる声だけがたまに大きく聞こえるだけで。
淋しい、すごく。
隣に寝てるからか、よけいそう感じる。
昔だったら隣に寝てたら鬱陶しいくらいからんできたのに……
今は人畜無害なマネキンのようにただすうすうと安らかに眠っている。
「ザックス、ザックス……」
毎晩耳元で呼びかけてる。
クラウドの声はきっとしんしんと降るあの故郷の雪の中に吸い込まれていくようにどこかに消えていってるのだろう。
そう、かつてザックスが自分に絶え間なく呼びかけていた時のように。