ミッドガル雑記;ミッドガルの12ヶ月

□HAPPY BIRTHDAY CLOUD!! 2010/8/11
1ページ/4ページ


メテオの災厄の後混乱をきわめた都市機能もこの数年で徐々に元に戻ってきた。
WROは相変らず瓦礫の山から地味に過去の資料を発掘する作業にかかっているが、今のところクラウドの生活には何の関係もない。
今日もぼんやり朝のコーヒーを飲みながらTV(多少電波は乱れるものの十分見ることができる)を見るともなしに見ていたら、五番街のかつて神羅近くにあった郵便局の発掘なんぞやっていた。
この暑いのにヘルメットに防塵衣、フィルター付きのマスクなんかつけてパワーシャベルで掘り起こした中から手作業で資料らしきものがないか探してる。ご苦労なことだ。

「クラウド!」
背後からマリンの声がした。
うん、ああ、とか言ったきりまだ眠りから完全には覚めやらぬクラウドは振り返りもせずにコーヒーマグ片手にTVに視線を向けたままでいたら、いきなり背中から抱きつかれた。

「クラウド!!お誕生日おめでとう!!」

すっかり忘れていた。

「あ、オレ今日誕生日だったな。」
さすがにマグを置いて振り向くとマリンも顔を上げてにっこり微笑む。

「どうしてそう自分の誕生日を簡単に忘れるの?シンジランナ〜〜イ!!」

別に忘れようとしてるわけではないのだが、小さい時から自分の誕生日を祝ってもらった覚えがあまりないので、どうもピンと来ない。

「今夜は仕事入れてないよね??去年は朝からびっしり仕事入れてたでしょ?」
そうなんだ、誕生日なんて思い出せないほうがいい。
うっかり自分の誕生日のことを思い出してしまうと、ただ一度きり心から祝ってもらった時のことを思い出して〜そしてそれに付随する諸々の思い出も連鎖反応のように次々思い出して〜やるせないような息苦しい思いに襲われる。
去年はそんな発作にかられていたたまれなくなったクラウドは、わざわざ自分の誕生日にぎっしり仕事を入れておいたのだ。

今年は忘れてた分だけマシだ。
夕方から夜にかけて仕事も空いている。

「ゴメンな。マリン。オトナになると子どもの時とちがって誕生日が特別の日に思えなくなるんだよ。」
クラウドが一応それらしい言い訳を言うと、マリンは不満そうに口をとがらせた。

「でも父ちゃんなんて自分の誕生日ちゃんと覚えてて、私がおめでとうメール入れると3秒で返事がくるよ。昨日からマリンのメール待ってたぞ!って。」

クラウドはマリンの頭をきゅっと抱きしめた。
子ども特有の日向の猫のような匂いがふわりと上がる。

「オレは忘れっぽいんだ。」

「知ってる。」

クラウドとマリンは顔を見合わせて笑った。


マリンが誕生日のことを持ち出すくらいだから、きっとまた夕食にはティファがケーキを焼き、何か自分の好物を作ってくれるのだろう。
和やかで平和な誕生日。
それはそれでいいものだ。

クラウドはマグをとんと置くと、マリンの額にキスをして立ち上がった。
今日は夏らしく晴れ渡ったいい日だ。
フェンリルを飛ばすにはもってこいだ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ