普通にザックラ〜ミッドガルの日々

□バイクが転倒する
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カームの街は初めてだ。

綺麗な町並みの落ち着いたところだ。
バイクで街に乗り入れると子どもたちが指差して騒いでる。
そう、このバイクはまだ雑誌に載ってるだけで、どこにも走ってないんだ。
こんなすごいバイクを当たり前みたいに試乗させてもらってるザックスはすごいんだな・・・オレまで便乗させてもらって悪いようだ。

ザックスがステーキ食おうぜ、って言ってたけど、またご馳走になるのが悪いような気がする。
店に入るとなんだかジロジロ見られてるような気がする。
あんなバイクに乗って来たからだろうか?

ザックスにバイクについてつい夢中で話してしまった。
だって、航空機開発の副産物として出来たエンジンだ!パワーが全然違うんだ、今までのものと。
音がまたなんともいえない。体の芯に直接響いてくるような音。恍惚としてくる、って言ったらザックスに変な顔された。
ザックスは例によって気持ちよくぱくぱくと食べている。ザックスが食べるところを見るのが好きだ。無心に食べてるところをちょっとぼんやり眺める。ソルジャーだってそんな特殊な人間じゃないんだって思う。
頼んだ量で足りるのかな?

店出る時、軽く肩を抱かれた。親しみをこめてくれるのが嬉しい。

後ろでなんだか口笛が聞こえた気がした。なんだろう?

帰りは急ぐ必要もないからって真っ直ぐな道で運転を交代した。

凄い!!!エンジン音が直に体に響いてきて頭が痺れるみたいな気持ち良さだ。
ハンドルが扱いづらい。跳ね馬というか暴れ馬に乗ってるようだ。
ザックスが心配して後ろから覗き込んでる気配がする。まあ何があってもザックスがいれば大丈夫だろう、って思う。信頼してる。
こんな風に誰かを信頼するなんて初めてだ。母さん以外の人を信頼したことないから。

突然ザックスが耳元で叫んだ。なんて言ったかよく聞こえなかったけど焦った声だ。
スピードを落とせ、って言ったみたいだな、と思った瞬間バイクが跳ねて宙を飛んだ。ざっと音をたてて冷や汗が出た。
ザックスが背中から覆いかぶさってハンドルをとる。

強い衝撃を感じたとおもったら暗転した。意識を失った・・・


どれくらい意識がなかったのかよくわからない。
そんな長い時間ではなかったようだ。

ザックスがオレを抱きかかえて名前を呼んでる。

大丈夫だ、って言いたかったんだけど言葉が出なかった。

蒼い魔光の瞳が涙で濡れてる。
ソルジャーも泣くんだ、ってぼんやりしながら思った。

心配かけてしまった・・・バイクは無事なのかな、ってそっちの方が心配になった。

「バイクは大丈夫?」って聞いたら、

「オマエが無事ならあんなものどうでもいい!」って抱きしめられた。

ザックス、ありがとう・・・

ミッドガルに来て初めて友達ができた。

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