普通にザックラ〜ミッドガルの日々
□初めて映画に誘う
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食事の後会計を済ませると、クラウドがご馳走様でした、とぺこりと頭を下げる。
なんだかまだ肩に力が入ってるようだ。
「映画のチケット、もらったのが二枚あるんでよかったら観ない?」
もちろんウソだ。数日前に自分で購入した。もしかしたら一緒に行けるかもしれないからって・・・
最近封切りされた人気のアクション映画のチケットを胸ポケットから出してみせる。
クラウドが目を見開いてオレを見てる。淡い水色の大きな瞳だ。長い金色の睫毛が瞳をふちどっている。
自分がどれほど綺麗なのか知らないんじゃないかな?
「本当にいいんですか?すごく嬉しいです。」やっとにっこりした。天使の微笑みだな。
「んじゃ、行こうぜ!映画館はすぐそこだ。」
嬉しいのはオレの方だ。なんだか充実した一日になってきた。映画の後、一緒にちょっと飲めるといいな。
ミッドガルの映画館は最新の設備が整い、映像も素晴らしいものだ。
入り口でチケットを見せ、軽くつまむものと飲み物を購入し、席に着く。
クラウドはミッドガルで映画を観るのは初めてなんだそうだ。いつも何してるんだろう?
あまり遊び回ってないようだ。オレがミッドガルに来た時は毎日遊び狂ってたなあ〜なんて思いだした。
ポップコーンの大きいのを一つ買ったので、一緒につまむ。
気づくとオレが一人でばりばり食べてる・・・
「クラウドも食えよ。オレがみんな食っちまいそうだよ。」小さい声で耳元で話す。クラウドの髪の匂いはいい匂いだ・・・
「今食べたばかりだから。」クラウドはそういうとオレの方にポップコーンを押しやった。
「オレはいいです、ザックス、食べて。」結局オレが全部食べた・・・
映画は何のこともないカーチェイスに銃撃戦が織り込まれてる、単純な勧善懲悪ものだ。
銃撃の音は実はあまり聞きたくない。
本物の戦場がフラッシュバックするからだ。ミッドガルに戻ってまだ日が浅いといつもそうだ。
ちょっと深呼吸して、隣のクラウドをこっそり覗きみる。なんだかほっとする。
映画の画面が変わるたびに白い頬に色が映える。映画よりこっちの方がいい。
ほとんど映画の内容もわからないうちにエンドロールが流れ出した。
クラウドは結構真剣に観てたようだ。
終わって映画館を出るとまだ日も沈んでない。飲みに行くには早すぎるかな・・・
一応誘ってみる。
「クラウド、軽く一杯やらない?」オレが言うと驚いたような顔で
「お酒はほとんど飲んだことないんですけど・・・」と答える。
まあいいじゃないかと、勢いづいたオレはクラウドをほとんどひきずるかのように腕をつかんで歩き出すと困ったような顔で
門限があるから・・とか言ってる。
あの門限「八時」を守ってるなんて驚きだ。
「クラウド、あの門限はね、意味ないんだ。裏口からならいつだって入れるんだよ。オレも一般兵の宿舎にいたからよく知ってるんだけど。」そういうと赤くなって、
「そんな時間に出歩いたことないから・・・」と言う。
「オレが責任持って送り届けるさ。ダイジョーブだって。」
なんだかんだ言ってもクラウドはそれほど嫌がってる風に見えないので二人で飲みに行くことにした。
やった!!
行き着けのスナックに寄る。クラウドはビールならいいと言うので、二人でビールを飲みながら色々話をする。
オレがミッドガルに来たばかりの頃の失敗談を話すと笑いころげてた。
地下鉄乗ったらお金が足りなくてゲートが閉まったんで、無理やり壊して出たら、すげえ叱られた話とか、宿舎に入ったばかりの時、お湯の温度調整がわからなくて毎日ほとんど水を浴びてた話とか・・・
かなり距離が縮まった気がした。
最後の方はオレに敬語を使わなくなってたし。
時間を気にしてたんで、宿舎まで送って行った。裏口の警備員のジイサンがまだオレのこと覚えてて、
「ザックス!!元気でやってるか??オマエは昔悪さばかりしてたからなあ・・・」とばしばし肩を叩かれた。
クラウドの前でちょっとバツが悪かったけど、緊張はほぐれたみたいだ。
「またな!!一緒にメシでも食おうぜ!連絡するよ!」と声をかけたら
「ありがとう、ザックス。こっちこそ今日はすごく楽しかった。」と明るい声が返ってきた。
ホント、今日は最高の日だった!また誘おう。