普通にザックラ〜ミッドガルの日々

□初めて電話する
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ザックスはミッドガルに戻ってきてから、クラウドに連絡するかずっと迷っていた。
仕事中にあわてて携帯の番号とアドレスを聞いただけで、いつどういう風に連絡するとは互いに何一つ決めてなくて、本当にその場のノリで、じゃあ今度連絡するよ、なんて軽く約束しただけだったからだ。
ザックスらしくもなく、ミッドガルに帰ってから一週間以上もうじうじ迷っていたのだ。
こっそりクラウドの所属する連隊のスケジュールまで本部のPCで調べてしまい、まるでこれじゃストーカーだよ、と自分で苦笑したりしてた。
今日は休みのはずだ。偶然を装って連絡してみようか、とさっきから携帯片手に握り締めて考え込んでいた。
何て話そうか、シュミレーションのように頭の中で繰り返している。
さりげなく、押し付けがましくなく、ほんの思いつきで電話したようにふるまわないと。

クラウドを初めて見た時の衝撃がよみがえってくる。
一緒にミッションに参加した時、油断していた自分をタイミングの良い狙撃で助けてくれたのが、クラウドだ。礼を言おうと近づいたら、

汗をかいたのかヘルメットをとってこちらを振り向きにこりとした。たぶん自分はぽかんと口を開けていたに違いない。
雪山に溶け込むような白金色のふんわりした髪、陶器のような肌、端正な顔立ちに水色の大きな瞳。
恥ずかしそうに自分が役立ったのを喜んでいた・・・ああ、まったくオレは頭がおかしいんじゃないか、こんなにクラウドのことが気になるなんて・・・ザックスは携帯をいらだたしげにパチパチ開閉した。

今日は連絡するにはたぶん一番いいタイミングなのだ。クラウドは朝から何もスケジュールは入っていないはずだ。
先に誰か友人と約束でもしてて、断られたらどうしよう?
じゃあまたねと軽く言っておいて、すぐ連絡するのもおかしいから、またしばらく待たないといけないだろう。
そんなに待てるか自分に自信がない。
一般兵の食堂にまでおしかけようかとまで思っていた。それにしても一回くらい会ってからじゃないと、理由づけが難しい。
まさかいきなり、オマエに会いたかった、じゃ変態扱いされそうだし。

一般兵の食堂のメシはうまいって聞いたから、ってクラウドの来るころくらいの時間にさりげなく昼飯食ってたらどうだろうか、とか。

どう考えてもソルジャーの行ってる食堂の方が美味しいのだから、わざとらしいことこの上ない。

一般兵の使う射撃場で張ってようかとも思った。
ちょっとぶらっと見に行ったこともあるのだが、あいにくクラウドはいなかった。
あまりウロウロしてると怪しまれるので、本当にちょっと覗いただけだったが・・・今度はもっとスケジュールを細かく調べて待ってようかとも思った。

それにしても神羅の宿舎は広い。なかなか偶然に会えないもんだ。

今度はクラウドの細かいスケジュールをこっそりプリントアウトしておこう、自分の予定と照らし合わせて、なるべく自然に見えるようにばったり会えるといいから。

ともかく、これから思い切って電話しないと。
何もかも、それからだ。オレが一人で考えてるだけじゃ何も始まらない・・・

クラウドの携帯のナンバーはもう覚えている。何度も何度もこのナンバーを眺めていたのだから。
電話帳から探す必要もない。空で暗記してる。


思い切ってダイヤルボタンを押した。
1〜2回鳴っただけですぐにクラウドのちょっと眠そうな不機嫌そうな声が聞こえた。胸がどきどきしてきた。

「やあ、まだ寝てた?オレ、ザックス。覚えてる?」なるべく軽そうに話す。

「あ、おはようございます。すいません、今日休みなものでまだ寝てました。この前ミッションご一緒したザックスさんですね?」
クラウドの声が少し緊張している。

「あ、ザックスでいいよ。オレ今日休みなんだけど、そっちはヒマ?ヒマだったら昼メシでも一緒にどうかと思って。」

「え?本当にいいんですか?オレはヒマです。今日一日休みなんです。」やった!!、クラウドは予定なしだったよ!小躍りするくらい嬉しかったが、さりげなく、

「じゃあ、オレも今日休みで予定ないんだけど、一緒にどこか遊びに行こうか?」誘ってみた。

「ありがとうございます。オレ、ミッドガル、まだよく知らないんであまり出歩いたことないんです。よろしくお願いします。」

待ち合わせの時間と場所を決めて、電話を切った。

よし!!と一人で拳を握り締めた。

なんだか浮き浮きする。もしOKだったら、なんて考えて、予定も自分の中では出来ていたんだ。

昼は最近五番街にできたパスタとピザの店に誘おう。
その後は映画だ。この前封切られたばかりのアドベンチャーものだ。チケットも実は買ってある。クラウドが行けなかったら誰かに売りつけるつもりだった。夕方からは一緒に軽く飲んでもいいな。

ザックスは口笛を吹きながら今日着る服にブラシをかけ、靴を磨いた。


楽しい一日になりそうだ。

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