オリジナル小説置き場

□僕等望世界
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手放そうとしていた意識は、


「あー、コイツは駄目だ。完全にイカれてる。
じゃ、楽に…」

『逝っとく?』

残酷で、能天気な声を

要らないのに拾っていた。







「起きた?」


目の前には、隻眼の少年。
「近くで見ると、さらにどうしようもなくイカれてるな。」

いきなり失礼なことを。


「失礼な…。」


でも彼は、予想外のことを言った。


「外見じゃねえよ。
お前の『存在』って奴?」
「どういう意味?」

「人間に理解出来るように言うと、『死』
お前は『暫定死亡者』だな。」

さっぱり理解出来ない。


「まだわからないか。
人間が言う、『幽体離脱』だよ。
つまり、今俺が話しているのは、『お前』って魂なんだ。
『お前』の入れ物はアレ。」

少年が指差した方を見たら、『僕』がいた…。
車にでもひかれたのだろうか?



「先に言っておくが、これは夢なんかじゃない。
れっきとした現実。
さて、『暫定死亡者』。お前このまま逝っとく?」
「冗談じゃない!
まだやりたいことが沢山あるんだ。
こんなところで死ねるか!!」

「そう言うと思ったから、起こしたんだぜ?」



少年は不敵な笑みを浮かべた。

「『入れ物』に戻りたいなら簡単だ。
『鍵』を探せばいい。」
「『鍵』?」
「そいつも説明しないと伝わらんか?
まあいい。お前は『奴』より物分かりがいいからな。『鍵』は、『強い思い出』だな。」
「じゃあ簡単じゃん。」
「最後まで聞け。
これから俺とお前は、入れ物の中に残る思念からそれを探す。
イメージとしては、でかい図書館から一冊を見つける…なんだが」


少年は言葉を詰まらせた。

「検索不可能な上に、制限がある。
およそ10分。入れ物に思念が残る限界だな。
ついでにお前が諦めた瞬間終わりと思え。」

少年の右目の強い光。

真っ直ぐ僕を見てる。



まだ、僕が幽体離脱しているとは信じられないけど…

そう仮定するなら、彼を信じてみたい。


「キミの名前は…」

自然と言葉が出た。


「俺に名前は無い。
『奴ら』からの識別名は『ファントムシャオ』
結構気に入ってるから、そう呼べ。」


…ファントムシャオは、鎌を取り出して。



『僕』に突き立てた。
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