オリジナル小説置き場

□ある晴れた8月の…
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「お兄ちゃん、起きて。」
フィアーがフィーネを起こす。

「あと三分駄目ですか?」
「駄目です。
今日は大切な日なんですよ。」
「そうでしたね。
ではフィアー、一つお願いがあります。」
「何?」
「それは…」







「今日は晴れて良かった。」
「大切な日だもの、ね」

幸せな表情の2人にブレイクは花束を渡す。


「あぁ、おめでとう。
レイキ、シェリル。」

「ブレイク、来てくれてありがとう。」
微笑むレイキには、復讐鬼の影はもう無い。
「不思議な絆だからな。」
「次はブレイクの番かな?」
優しい表情のシェリルが一度壊れたとは信じられない。


「さぁね。」
「見つける気が無いとか言わないよね?」
「『俺にはあの子しか見えない』とか?」
「からかうな。」
楽しい声が響く。





「俺はやりたいことがあるからな。
そんな暇ないさ。」

『やりたいこと』に、レイキが反応した。






「昔言ってたあれか?」
「実はもうはじめてる。」
「男の子2人で悪巧み?
懲りないんだから…まったく。」

よくわからないらしいシェリルはそっぽ向いた。





「孤児を引き取ることにしたんだ。
名前はリア。
リア=ブレス。」




リア。その名前は



「あの子の…」
「俺がつけた。
あの子のような、強く優しい子になって欲しい。
そう願った。」





レイキ、シェリル、ブレイク。


3人をつなぐ絆。

それがあの子。


あの子はリアという名前だった。





「さぁ、そろそろ時間だ。行けよ。主人公。」


2人の背を押し、去って行こうとするブレイク。




「待てよ、ブレイク。」
「『思い出』残そう!」


レイキはカメラを出した。


いつも写真を取るのはレイキだった。






でも今日は。



「俺が取る。
今日は『そういう日』だからな。」






一度だけ、シャッターを切る音がした。




その時、黒い羽根が降り注いだ。


黒い羽根。




「あの子が祝福してくれているみたい。」

と、シェリルが呟いた。
泣きそうな表情だった。



「涙はとっとけ。
代わりに、笑ってやろう。」


レイキは言い、空を見上げる。




「おめでとう、レイキ。シェリル。」



もう一度だけ、ブレイクはそう言った。



「末永くお幸せに。」









教会の屋根の上。


「お兄ちゃん、さすがにこれはどうかと思う。」
羽毛を黒く染めたものが籠の中に。

「これが一番喜んでもらえるかと思ったんですが。」
「馬鹿ですか。」


黒き天使はもういない。
それを掘り起こすのは酷ではないか?

フィアーはそう言いたい。

「まあ、結果オーライということで…」
「駄目ですからね。
罰として、シェリルとレイキが幸せに過ごせるか最後まで見届けて下さい!!」







ある晴れた8月のある日。



レイキとシェリルは結婚式を挙げた。





あの幸せな笑顔を、俺は忘れないだろう。

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