オリジナル小説置き場
□飛翔
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―プロローグ―
暗闇の中、真っ赤な蝋燭を持った燕尾服の少年が、
「ぺこり」とお辞儀した。
「はじめまして。私はフィーネと申します。」
また、お辞儀。
「ところで、貴方は人の心とは・・・何処にあると思いますか?」
フィーネは、「くすっ」と微笑。
そして、後ろを向く。
「人の心というものは、実に不可思議なものです。
目の前にあっても、決して触れられず・・・
時に頑丈で、
時に繊細で。
自分のものなのに、自分でもその形を
知ることはできない。
嘘だってつきます。」
「でも、」フィーネは「くるっ」と首だけを動かして振り返った。
「自分だけが知っている形というのも、
また、存在するのです。
一番正直なのも、また、心。
矛盾しているようですが・・・。
どう考えるか。
それが大切なのではないでしょうか?」
「さて、」フィーネは今度は体ごと正面を向きなおす。
「貴方は、どちらでしょう?
貴方にとって、心は正直ですか?
それとも、嘘をついているでしょうか?」
「ふっ」と軽く息を吹いて蝋燭の火を消す。
「答が出たとき、私は貴方の前に現れるでしょう。」
暗闇の中、声だけが響いた。