Miyabiの図書室

□桜花の舞う頃(4/30完結)
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あの日はバイト先の仲間達と近所の公園へ花見に行った。


「逢、ほら飲め飲め。」


ビールを店長からどんどん注がれて、逢は自分で分かる程、顔が火照っていた。

逢は、少し酔いを冷まそうと皆から離れてに腰掛けていた。

桜の下から垣間見る月がとても綺麗で、逢はただぼーっと月に見とれていた。


「何ふけってるの?ちゃんと食べないとかないと後でお腹すいちゃうぞ」


バイト仲間で一番仲良しの里美がから揚げやソーセージなどを紙皿に入れてもってきてくれた。


「逢さ、もしかして章吾と別れたの?」


「うん。思いっきり振られた。」


「そっか。ま、逢ならあんな奴よりいくらでも相手はいるよ。早く忘れちゃいな」


里美は逢の肩をポンポンと軽く叩いて、にっこり笑った。


3年も付き合ってた章吾からいきなり別れを切り出されたのは、つい3日前のこと。

それも、ベッドで抱き合ってすぐの事だった。


「今日でもう終わりにしないか。お前といると疲れるんだ。」


逢は耳を疑った。

確かに章吾の影に他の女がチラチラしていたのは、薄々気付いてはいた。

でも、まさか、こんな形で別れを切り出されるとは思ってもみなかった。

どこかで必ず戻ってくるという自信があったからだった。


逢は、あえて追うこともしなかった。

その日、ホテルのベッドで逢は一人、裸のままシーツに包まって夜を過ごしたのだった。



「今日はお開きにするぞー。」


店長の声が夜の静かな公園に響き渡った。

深夜3時、酔っ払ってはしゃぎながら、全員で後片付けをし、そのまま家へと帰っていった。


「逢、今日うちに泊まりなよ。」


「うん。そうする。」


里美は公園のすぐ近所のマンションで一人暮らしをしていた。

逢と里美は自転車を押して、マンションに向かった。


里美のマンションは、こじんまりした4階建てのワンルーム。


部屋の中は、シンプルだけど白とグリーンでまとめられていて、結構お洒落な感じ。


「シャワー先使うね。」


里美は、そう言うとそのまま服を脱いだ。


先月里美はハワイに旅行に行って、肌にはビキニの後がくっきりと残っている。


同性でも、結構その姿は官能を刺激するものがあった。

少し酔いも回っていたというのもあるかも知れない。


それに里美は、贅肉というものなど無縁な感じの、しっかり鍛えられた洗練された体つきだったから、尚更だ。


逢がその姿をじっと見つめていると、里美は少し恥ずかしそうに


「何みてんのよっ。あ、勝手に冷蔵庫のものつまんでいいからね」


そう言って、バスルームに入っていった。



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