Miyabiのティールーム

□恋暦(2007完結)
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「ペットのように」


貴女を初めて見たのは

薔薇が咲き乱れる この季節。


日曜日の朝だというのに、何やら外が騒がしい。



「お隣り、越してきたみたいよ、さっき挨拶にみえてたわ」



母はレースのカーテンを少しずらした。

隙間から、引越し屋のトラックの屋根が見える。




「ふーん」




動くべき脳の細胞が半分眠ったまま、適当な返事をする。




「はーい」


インターホンが鳴り、私は玄関の扉を開いた。



そこには、髪の長い少し切れ長の目が美しい女性が立っていた。




「あの、すみません。実は猫が、お宅のベランダに・・・」



私は、一瞬ドキッとした。

それは、余りにもその人の目が艶っぽかったから。

私は、それがバレないように、顔を少し俯き加減にして、どうぞと2階に案内した。




「ミーヤ。ほんと困った子ね。」




そう言って、綺麗な毛並みのミケ猫を抱き抱え、ゆっくりと猫の背中を撫でながら、私に微笑んだ。





あの日から

ちょうど1年。



ベッドの端に銀色に光るチェーンについた紅い首輪。




「お利口ね。ご褒美にキスをあげるわ」



美しい流れるような髪が四つん這いになった私の頬に触れた。



そのとろけそうな甘く妖しい目に私は目を閉じた。


甘く優しいキスが私の背中を刺激する。


そして細い指先が私の身体のラインをゆっくりと這っていく。



「ンッ・・・ハッ・・・」




背中に走るその感覚に酔いしれ

私の口から微かに吐息が漏れる。




私は貴女のペット。


貴女だけに見つめられる事が 私の幸せ

貴女だけに触れられる事が 私の悦び




貴女に躾られ、

私は貴女だけのものになる




乱れ咲く 私の紅い薔薇

そこから溢れ滴り落ちる滴の全てまで

全ては貴女のもの




貴女のもの・・・・・・。
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