Miyabiの図書室
□冬の音色とともに(1/27更新)
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懐かしい風景。
何十年前だったろうか。
幼い日。何も考えず、ただただ楽しい事に無我夢中で
寒さなどたいして感じることもせず、走り回っていたあの頃。
心が一瞬にしてその頃にタイムスリップする。
昔と変わることなく、保育園の脇道には、黄色い銀杏の葉っぱが、
とめどなく降り注いでいる。
大好きだった、この光景。
黄色い自然の紙ふぶきが自分に舞い降りるようで、何か気分がはしゃいだような
そんな気持ちになる。
その銀杏並木にただ1本、葉っぱが殆どなくなってしまい寒々しく感じる1本の樹に
目が止まった。
何か光っている。私はその光に吸い寄せられるように、保育園に忍び込み、その樹に近づいてみた。
そこには銀色の小さなハンドベルのついたネックレス。
「これ……、あの時の」
私は、懐かしさの余りそれを手にとってみた。
少し古ぼけてはいるものの、手入れされているのか汚れひとつない。
私はそっと鳴らしてみる。
チリンチリン……
里子ちゃんとは、大の仲良し。いつもお残り組で一緒だった。