*拍手ありがとうございます*

―‐―‐―‐―‐―‐―‐―‐―‐―‐

「おい、担任。これはなんだ?」



とあるものを訝しげに眺める翼くん。その目線の先には輝く一つの楽器があった。


「あぁ、それは“アルト サックス”って言うのよ」


少しの間友達から借りて吹いた事のある唯一の楽器。一応音階ぐらいは吹けるが、長年のブランク(?)があるので良い音が鳴るかは分からない。しかし、いつも負けてばかりの生徒に一泡噴かせたい。そんな想いでわたしはそれを手に取った。


「担任…?」


「ちゃんと聞いててね?」



キチンとリードまでついたマウスピースを口にくわえ、息を吹き込む。その瞬間空まで届くような大きな音がベルから鳴りだした。


「…! excellent!!スゴいな担任!!」


「えへへ〜」



もしかしたら、初めて翼くんを感動させることが出来たかもしれない…!そんな優越感がわたしの心に生まれだした。しかし…



「担任。それを貸せ」


「えっ…」



翼くんはおもむろにサックスを手に取ると慣れた手つきでそれを構えた。一つ一つの動作にわたしは色気を感じ直視出来なくなる。



「!!…つっ翼くん待った!!」



重要な問題を忘れていた。そのマウスピースは、先程までわたしの口が触れていたのだ。そのマウスピースで翼くんがサックスを吹くのだとしたら…


(間接キスじゃない…!!)



そんな事もつゆ知らず。翼くんはわたしよりも断然良い音を音楽室中に響かせた。



「ハ―ハッハッハッハッ!!担任ごときがこのオレに挑むなど一年速いわ!!」



“百年速い”でしょとつっこむよりも、悔しがるよりも先に思った事は何も気にせずに口を付けた翼くんの心の中だった。




(本当にわかってなかったのかしら…)
(…計算済みだ。バカ担任……)






thank you your webclap!!


何かあればお書き下さい



[TOPへ]
[カスタマイズ]

©フォレストページ