その他短編

□おやすみ
1ページ/1ページ

ふわふわ、ふわふわ。


体が宙に浮くような、そんな感覚の中で




君が僕に、微笑みかけた気がした。







「…ふぁ」


ふと目を開けると、本棚が夕日に当てられオレンジに染まる部屋に居た。
ぼーっと靄がかかった頭を回転させながら、眠る前の自分を思い出そうとしたその時。

カタン、と本棚の向こう側から何かが落ちる音がした。
音からして、本でも落ちたのだろうか。そんなことを思った少年――リーンはゆっくりと椅子を引いて立ち上がる。


「…アリア?」

「あ、リーン。おはよう」


本棚に片手を当てて覗き込むように反対側を見ると、そこには赤味掛かった桃色の髪の少女が足元に落ちた本へ手を伸ばしていた。
リーンには少し難しそうな表紙の本を拾おうとしてしゃがみこんでいた少女――アリアがリーンに気づき甘く優しく微笑む。


「(…あれ?)」


その微笑みは、まるで先ほどまで見ていたような気がする…なんて思ってリーンは自身のその思いを不思議に思った。
先ほどまでは寝ていたはずだし、もしかしてその前に何かあったのだろうか?



「御免ね、私の調べ物だったのに。…でも、寝ちゃうとは思ってなかったから吃驚したよ」


本の堅い表紙をぽんぽんと軽く叩きながらアリアが苦く笑って言う。
ああ、そうか。とやっとはっきりと機能し出した頭の中から昼にアリアと此処へ来た記憶を引っ張り出した。


確か、学校が終わってからアリアは一人「調べ物をするから」と図書室へ向かって、
することも特になかったリーンはそれを手伝う、と言って彼女と一緒に此処へ来た。

しかし、少し難しい内容の本を読んでいたらうっかり――という訳だった。


「ううん、僕のほうこそ御免ね。手伝うって言ったのに…」

「あ、大丈夫だよ。結局よく分からなかったけど…魔法の本、見つけたから」


魔法の本――つまりはきっと魔術の本だろう。
アリアは唯一モンスターと戦える子供…とこの学校の生徒の中でも一際目立つ存在だった。

今日の調べ物もモンスターの出現するダンジョンについてだったのだが、
流石にそんな本は学校の図書室には中々ないらしい。


「それに、実はさっきまで私も寝ちゃってたんだよねー…。うん、ちょっと難しいのにチャレンジしたら何時の間にか」

「ふふ、そっか」


少し肩を竦めてアリアは悪戯っぽく笑った。
と、思ったら今度は大きな欠伸を零す。

あ、とアリアが声を上げたときにはリーンは既にくすくすと笑ってしまっていた。


「もう…笑わないでよ」

「ふふ…御免ね。…まだもうちょっと時間あるし」


「「寝ちゃおうか?」」


リーンの言葉にアリアが自身の声を重ねる。
一字一句違うことなくぴったりと重なった言葉に驚くリーンに対して、今度はアリアが笑う。

それにつられてリーンも微笑むと二人揃って机へと向かい、
リーンは先ほど眠っていた席へ。アリアはその隣へと座る。


「今日はお昼寝の日、だね」

「あ、そうかも。ふふ、次に目ぇ覚めたら夜だったりして」

「パパやママに怒られちゃうかもね」


そんな会話を交わしながら、机に伏せる。
お互いがお互いの方へ向きながらゆっくりとした時間が流れていく。


「…そういえばね」

「ん?」

「さっき寝てた時、私ね夢を見たんだよ」


ポツリ、ポツリとアリアが話し出す。
その夢はよく分からない夢で、自分は一人でふわふわとした空間の中に浮いているのだと。

その時自分はたった一人なのに、まるで誰かと一緒に入るような感覚で。
凄く暖かい気持ちになれた夢なのだ、と。


「あ……」


リーンはその夢に覚えがあった。

先ほど思い出したあのデジャビュ。
あれはきっと、これだとリーンは思った。


多分、自分はアリアと同じ夢を見ていたのだと。
だとすれば。


「僕もね、同じ夢を見たよ」

「…え?」

「だから、きっとその夢では見えなかっただけで、若しかすると僕らは一緒に居たのかもしれないね」


ふわふわの空間で、何というわけでもなく二人微笑み合う。
唯、甘く優しく、暖かい時の中――二人きりで。


「…そっかぁ」


そう呟いたアリアがとろんと眠気帯びた瞳で小さく欠伸を零した。…今度は、手を添えるのも忘れずに。
それが移ったのか今度はリーンも小さく欠伸をした。

そろそろ眠ろうか、なんて
言葉を交わさなくても良かった。

どちらからともなく、瞳を閉じてお互いの手をきゅっと握る。


今度も一緒に、夢を見られるように。

また、あの夢のように笑いあえるように。




そんな想いを込めて、二人夢の世界へ――堕ちて行く。







【おやすみ】
(…ん…?)
(あ、おはよう、アリア)
(…おはよう、リーン)


(真っ暗、だね)
(そうだね。…一緒に怒られようか)
(…うん)


+ + +


>RPGにご注意!(どんな言い訳)

いえあの、申し訳御座いませんでしたあああああああ(土下座)
一日中ずぅぅぅぅぅぅっとゲームしてました、はい。RPGって止まんないんです。それが乙女ゲームでキャラが魅力的だと尚更止まらないんです。
…ゲームの世界へトリップ☆な夢のようなゲームじゃないですよ。あれはもう既に全部クリアしてますかr(御前)

まあそれはさておきまして、夏休みに突入して時間も更に出来て、
課題をしてゲームをしてもまだ時間があるような休みに創作活動しなくてどうする!と舞い戻ってきました。
乃島は消えて復活して消えて復活して消えて消えて消えて消えて復活するような奴です。←

今回のお話はリンアリでほの甘を目指したつもりです。
こう、ふわふわしたのが書きたかったんです。はい。
まあ案の定失敗した綿飴のようにへにょーん(?)な話になりましたが。

ではでは、皆様も良い夏休みをお過ごし下さいませーv



2009.09.04 音成 舞綾(転載日時)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ