その他短編

□この想いの名前を、まだ知らない
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拝啓、神様。

もうすぐ春です。
最近雪の量が減ってしまい、少し寂しいですが…春になれば畑が今よりきっと作物で一杯になると思うとわくわくします。


さて、此処から本題なのですが――私は現在凄く悩んでいることがあります。



丁度お昼のキルシュ亭に、私と彼は居た。
他の皆は買出しに行く、と言ってつい数分前に出て行ってしまった。
本当は彼も行く予定だったらしいが、私が居るので残ってくれた。


しかし、それが果たして嬉しいことであったのか。
そうとも言えるし、そうでないとも言えるその日の光景を、私はよく覚えて居ます。


「…アカリ」

「…あ、チハヤ」

「『あ、チハヤ』じゃないよ。さっきから呼んでるのに無視なんて良い度胸だよね」

「うん、御免ね」



はぁ、と隣から溜息が聞こえた。

私だって、溜息吐きたいのになぁ…。
溜息を吐きたいと思うほどの悩み事の原因は隣に居るこのチハヤ、という男性です。


「ねえ、チハヤは何で私のことが好きなの?」

「…そんなこと考えてたんだ」

「だってー」


豪華な昼ごはんが並べられていく机に突っ伏した状態で顔だけを料理を運んできたチハヤに向ける。

ああ、今日の料理も凄く美味しそうだ。
なんて無理矢理思いながらも頭の片隅には少し前にあった感謝祭の日、花やケーキと一緒に彼から貰い受けた告白のことで一杯だった。



『僕は、アカリが好きだ』



なんてストレートに言うから。
そりゃあ、チハヤのことは好き。でもそれが、恋愛感情なのかどうかが分かりません。

学生のように分かりません、と言えば誰かが答えを教えてくれたら良いのに。

なんて言うのはきっと反則でルール違反なのだろう。――自分で気づくからこその恋愛。
この前ジュリがそんなこと言ってた気がします。(その時のことも告白のことで頭が一杯でよく覚えてないけど)


「何で、って言われても…惹かれたから」

「…それだけ?」

「そう、それだけ。それ以外に理由なんてないと思うけど」

「じゃあ質問を変える。チハヤは私の何処が好きなの?」


恋とは言葉ではっきりと言い表せない感情なのだとジュリは説きました。
理屈なんて関係ないし、関係なんてものも関係ない。好きになってしまえば、ありとあらゆるものを越えてしまうのだという。
恋愛感情だけでなくても、それが例え友情の好きでもその想いは色んな物を乗り越える力を持つらしい。

好き、とは案外厄介なものなのです。


「何処が、ねぇ…。それは分からない」

「…なんで?」

「無理矢理言葉で言えば、アカリの何処かに僕が惹かれた。それで好きになったんだから、それが何なのかは僕自身よく分からない」

「ふーん…」



本当に、厄介で複雑なものらしいです。







「ご馳走様でしたー」

「お粗末様。…で?」

「…はい?」

「確か言ったよね。『一週間だけ待って』って」


カチャカチャと鳴るお皿の音にちょっと和みながらぽやぽやと周囲に花を咲かせていると、
不意にチハヤが微かに首を傾げ、少しにやりと口端を持ち上げながらそんなことを言ってきました。

ちょっと、ちょっと待ってね。


『チハヤが、私を…すき?』

『そう』

『え、え…と、あの、』

『別に返事は今じゃなくても良いよ。待たされるの好きじゃないけど』

『じゃ、じゃあ、一週間だけ待って!』



ああ、確かにそんなことを言ったよ。そういえば今日がその一週間後に当たる日ではないですか。
ケーキの皿を落とさないように必死になりながら、ぐるぐると軽い眩暈がしつつも必死に脳内フル回転させてあの答えを出したじゃないか。


「うん、言ったね」


自然と、視線がチハヤから外されていく。


「一週間、待ったんだけど」

「はい、そうですね」

「何で目線逸らすの」

「ちょっと数日前に戻りたいと神様に願っていたのです」

「へぇ」


…御免なさい。

ああもう、本当にこの一週間何をして居たのだろうか自分は。


――ジュリやキャシーに相談。ベットの中で一人ずっと悩む。作物に水を遣りながらボーっと考える。歩きながら意識だけ感謝祭にタイムスリップして転ぶ。

…うん、そんなところだ。


それなのに結論が出ていません。
約束を守れそうに無い時の咄嗟の言い訳など御座いませんか。


「そんなのあったら良いよね」

「…テレパシー!?」

「全部喋ってたけど」


呆れたような、それでいて可笑しそうな表情でチハヤが言う。
ちょっと見惚れた、とかそれ以前に返事が決まっていないことがばれてしまいました。自業自得ですけれど。


「まあ、良いよ」

「はい…?」

「返事。決まってないんでしょ?」

「は、はい。誠に申し訳ないのです」


すかさずチハヤに向けて勢い良く頭を振り下げる。
ゴン、と鈍い音と共に額に鈍い痛みが走る。勢いがあったせいで余計に痛い。

そういえば、机に座っていたのを忘れていました。
それもこれもチハヤのせいなんだ、と思う。――全部チハヤのせいにしてやるんだから。


「ふ、…くく」

「わ、笑わないで頂きたいです」

「いや、…本当、期待を良い意味で裏切ってくれるね…っ」


肩が震えてる。
相当面白かったのであろうか。

そういえば口調が何時の間にやら敬語になっていました。これもチハヤのせいにしてやるんだ。


「ち、チハヤなんて知りません。人の不幸を笑う人は笑い過ぎて窒息すれば良いんだー」

「…ふふ、いちいち言動が子供だね」


ちょっと大袈裟に拗ねた仕草を見せる。椅子の背凭れの方へと体を回転。そのまま背凭れを抱き締めるようにしてそっぽ向いた。
でも、だ。今のチハヤの発言にはカチンと来た。


バッと勢い良く振り返って、文句を言う。――否、言おうとした。


振り返った瞬間、凄く近くで艶やかに微笑むチハヤ。
驚きによって自然と洩れる言葉すら、チハヤは溢させなかった。


「――っ」


声が、出ませんでした。
じいっとチハヤを見る私は水を求めて口をパクパクさせる赤い金魚に、そっくりだったことでしょう。


全身の力が抜けていく。
椅子が無かったら、きっと地べたに座りこんでいたことでしょう。

指の一本すら動かせない私は、唯――耳元で甘く、低く囁かれた言葉に身を委ねることしか出来ませんでした。





【この想いの名前を、まだ知らない】
(一週間も待った。これ以上は、待たないから。)
((神様、神様、私はパンクしてしまいそうです。))

(って、ことがものの一週間前にありましたよね)
(うん、そうだね。で、やっぱりその口調なんだ)
(顔近い、近いです、チハヤさん!)


+ + +

まーおーおとーおばつでー、れっべーるじゃーんぷーなのだーっ(←BGM/またか)

参照どうのこうのの前にチハアカって凄いって思いました。ネタが直ぐ思いつくな、この人ら←
激甘目指したつもりが笑えない微ギャグ甘になってました。っていうかアカリの性格が謎過ぎる。
えーと、感謝祭については突っ込まないで下さい。無理矢理ねじ込んだだけなので((

今回は真央ちゃんリクエストのチハ→アカで感謝祭、甘でしたー。
感謝祭、本当に書けなかった件についてはスルーで。…あ、愛と気合いは込めたんですが!(堕ろ/そしてめg/ry)

何かこの小説はネタがぽん、と思い浮かんでぱぱぱっと書けた小説でした。チハアカマジック☆(きらっ☆)
テーマは手紙、です。アカリの語り部分が微妙に敬語混じりだったりするのはそのせいです。
この話は最初と最後の括弧以外は回想らしいですし。(あーいまーい三せn/自重)
解説すると、最初と最後のみが本文の一週間後、『』会話が本文の一週間前です。
…わっかりにくいな!(何この作者)

お持ち帰り、苦情は望月 真央様のみ可能です。ひゃっふい(←)

更新できる時にばんばん更新しませんとね!
ではではー!
今日はコメ返信やって終わろうと思うので返信は暫しお待ちをッ!


…と、いう掲示板のとうk(ry)


2009.08.11 音成 舞綾(転載日時)

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