その他短編

□精一杯の、強がり
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気がついたら、

朝も昼も夜も、ずっと君のことを考えてる自分が居た。





光が窓から差し込んでくる。
眩しくて、暖かくて、もう一度夢の中へと落ちてしまいそうになる。

布団の中から手を伸ばして傍に置いていた時計を確認すると、
何時も起きる時間よりも少し早めに目を覚ましてしまったらしい。


今日は少し早く起きてみよう――そう思って起き上がる。


「…ふわぁ」


一つ欠伸を零して、立ち上がって鏡の前に。
髪を整えてピンで止める。

服を着替えて、変なところが無いか確かめてからキッチンへ。

昨日下ごしらえしておいた魚を焼いて、味噌汁を作る。
白米を茶碗に盛って、簡単にサラダを作る。

一人分の朝ご飯は出来るのにそう時間は掛からない。
机に暖かいそれらを並べて、一人黙々と食べる。
窓の外から、鳥の鳴き声。

それだけで此処がどんなに平和なのかが分かる。



時計を見ると6時前。
暇潰しに散歩に行くことにした。


扉を開けると何時もより透き通った空気と柔らかな光。
部屋の中で感じるものとは少し違ったそれは体を暖かく包み込んでくれる。


何処に行こうかな、なんて悩みは持ち合わせていない。
勿論、何時もの散歩道を行くだけだった。


一人歩きながら景色を見ていると、不意に誰かが走ってくる足音。
そして、背中に何かが当たる感触。


「おはよ、チハヤ!」

「…お早よう、アカリ」


明るい笑顔の彼女、アカリは此処に引っ越してきた頃からずっと僕に付きまとってくる。
今日は良い天気だねとか、チハヤの料理って美味しいよね(何処で食べたんだ)とか、
オレンジ採れたからジュースのおすそ分けだよ!(何で好物を知っているんだろう)とか、
何時もどうでもいい話を楽しそうに話しながら気がついたら彼女のペースに巻き込まれ、何時も広場まで一緒に行っている。


「今日は良いことありそうだー」

「どうして?」

「え? んー、何となく?」

「疑問で返すなよ」


あはは、とアカリが笑う。
それにつられて頬が緩んでしまう僕は昔の僕じゃ考えられなかった。
昔は――誰かと笑うなんてことはなかったはずなのに。

気が付いたら――そんなことを考える僕をアカリが不思議そうに見つめていた。


「あ、分かった!」

「何が?」

「良いことありそうな理由だよ。っていうか、さっきあったよ!」


満面の笑顔のアカリはそのままこう続けた。


「チハヤと一緒だから、良いことがある気がして
 チハヤが笑ってくれるのは、私にとって凄く嬉しいことだよっ」


何それ、なんて口では言うものの――きっと今の僕は真っ赤なのだろう。
こうなるってことは…、と自覚せずには居られない。

悔しいから、まだ強がっているけれど。


そんな、春の一日。




【精一杯の、強がり】
(悔しいからまだ言ってあげないよ)(チハヤ、何か言った?)(何にも)




+ + +

チハヤが自宅前を通って散歩するのはこういう理由であると良いな!というお話でした。
ちなみにチハヤ→←アカリみたいな設定で書き始めましたが、気がつけばチハヤ→アカリみたいな。アカリが天然だったらこれでも行ける気が((
…最近やすら樹いじらないのでキャラを忘れてますよー(爆)
ちょっと当たり前なこと聞きますがチハヤの一人称って「僕」でしたっk(終了)

っていうかもうこの際ぶっちゃけますけどこの小説は乃島が強がるチハヤを書きたいが為だけに書かれました。
そして書いてみて、「あ、これヴァルツでも萌えるな」とか思ったのはここだけの内緒のお話ですよ?(…

ではでは、読んで下さり有難う御座いました!


…という掲示板のとうk(ry)


2009.09.04 音成 舞綾(転載日時)

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