□獣神官の任務
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「まぁ…」

箱の中を見たダルフは笑みを含んだ呆れ声を出す。

「…ゼロスよ」

「はい?」

身体を震えさせつつ、私はゼロスに箱を見せる。
そして静かに、飽くまでも静かに問いただした。

「これは一体どういう事だ?」

「おや、溶けて―――ますね、これは残念」

ざ…残、念…だと?

「ゼロス、私はソフトクリームを買ってこい、と命じたのだぞ?
これは何だ?アイスか?
ただの甘いミルクではないか!」

段々と声が大きくなるが構やしない。

「いやぁ、買った時は確かにソフトクリームでしたし、そんな事を僕に言われましても」

笑いながら、悪びれもなく言い放つゼロス。
そしてヤツは尚も続けた。

「あぁ、セイルーンで偶然リナさんたちとお会いしましてね、少々話し込んでしまったんですよ。
その間に溶けたみたいですね」

「みたいですね、じゃないだろう!
溶けぬよう、氷でもなんでも入れときゃいいだろう?」

「え、いや…僕は氷の術はちょっと…
獣王様もご存知でしょう?」

どげし。

私はゼロスの頭を殴った。

「な、何をなさるんですかっ?」

頭を押さえ涙目になるゼロス。

「ほぅ、本来流さないはずの涙とは…芸が細かいな?」

「いや、そのっ!あの、獣王様?」

いよいよ本気でビビり出したゼロスを見下ろす。

「そんな部下、滅ぼしてしまえばいいじゃないの」

ダルフが言った。
腰に手をあて楽しそうに。

「そうだな」

私は右手に力をためる。

「じゅ、獣王様、もう一度買い直して参りますのでっ!」

私の返事を待たずにゼロスは空間を渡った。

「ふむ…ちと、からかいすぎたか」

「あら、あれ位いいんじゃないの?
ゼラスは甘いのよ」



―END―

2008.09.19
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