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□冥王の要求
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「やぁ、ゼラス」
闇から一人の少年が姿を現した。
「フィブリゾか…我が拠点に何の用だ?」
突然の冥王の訪問に、訝しがりながら獣王は問う。
「別に“群狼の島”には用はないよ。
あるのは君、ゼラスにさ」
歓迎している素振りを見せない獣王だが、しかし構わず冥王は続ける。
「ゼラス、君のところの獣神官を僕に貸して欲しいんだ」
「ゼロスを…か?」
「あぁ!そうそう、ゼロスとかいったね」
思い出した、と言うように顔を明るくするが、冥王にとって名前などどうでもいいのだろう。
「何を企んでいる?フィブリゾ…」
「今は秘密さ」
満面の笑みを浮かべ、獣神官の決め台詞を使いおどけてみせる冥王。
「そうか、理由を言えぬのなら部下は貸せないな」
獣王は冥王の要望を却下した。
そんな事は想定済み、と言わんばかりに冥王はニタリと笑うと、
「へぇ〜。
じゃあコレでどうかな?
君のところの部下、離反した上にガーヴの側についたんだよね?
それってつまり、ルビーアイ様に反旗を翻したって事…。
この責任、君はどう取るの?」
と、獣王を責め立てた。
『セイグラムのことか…』と獣王はすぐに思い当たる。
彼女とて、部下の不祥事を放っておく訳にはいかず何とかせねばと思っていた所だった。