□魔竜烈火砲
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「もうお前とは会うわけにはいかねぇ」

そう言って彼は私に背を向けて歩きだす。

「何で?何でよガーヴ?」

追い掛けて腕を掴む…

が、その腕は乱暴に振り払われてしまい私は尻餅をつく。
ガーヴは私を見下ろすとたった一言、

「…俺は魔族だ」

と言った。

魔族…?
じゃあもしかしてガーヴって、あの魔竜王ガーヴ?

同じ名前とか思ってた。
私は早口に呪文を唱え――――

「紅蓮の炎に眠る暗黒の竜よ その咆哮をもて我が敵を焼き尽くせ
魔竜烈火砲!」

解き放った。
ガーヴの背中に向けて。

「何の真似だ?」

ゆっくりと振り返るガーヴ。

「やっぱり魔竜王…ガーヴ」

私の放った魔竜烈火砲はガーヴに当たるやいなや、消滅してしまいダメージを与えられたとは思えない。
普通の人間ならまずあの世行きだ。

「知っていたのか」

「魔族――とは思っていたわ。
けどまさか、魔竜王とはね。大幹部じゃないのよ」

ひょい、と肩をすくめて言ってみる。

「ま、そういうこった。
お前も魔族といるわけにはいかねぇだろ」

「じゃあ何で?何で黙っていなくならなかったの?
わざわざ別れを言いに来るなんて…」

ガーヴはそれに答えず去った。
最後に一度だけ私を抱きしめて。



―――ある日、私は魔竜烈火砲を唱えた。

しかし。

いつも出るはずの赤い閃光は出なかった。

「ガーヴ…」

遥か南に突然現われた光の柱を見上げ、私は愛する男の名を呟いた。


―END―

2008.10.18


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