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□冥王の要求
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「ただいま戻りました獣王様」
「戻ったか…」
いつもの様子と違う上司に獣神官は訝しがる。
「如何なさいましたか?」
「…ん?あぁ。
先に報告を聞こう」
「……はい。
仰せの通り写本の焼却処分をして参りました。
写本の内容は……」
一通り任務の報告を聞くと、獣王は労いの言葉を部下にかける。
「そうか、ご苦労だったな」
「勿体ないお言葉です」
…………………。
しばし沈黙が流れる。
いつもなら獣神官はここで一礼して立ち去るか、次の任務を与えられるかのどちらかだ。
しかし獣神官は獣王の様子が気掛かりで、立ち去ることをしなかった。
「……ゼロス」
ややあって、獣王は重い口を開いた。
「はい」
「すまぬが、冥王フィブリゾのもとへ行ってほしい。
ヤツが人手を借りたがっていてな…」
「――僕に冥王様の命に従え…と仰るんですか?」
「あぁ、そうだ。
セイグラムの離反で無理矢理押し切られてしまったのだ」
獣神官の眉がピクリと動く。
「なるほど…セイグラムさんの不祥事の尻拭いを僕がするわけですね」
ゼロスは面白くなさそうに言った。