宝物 

□□上忍の課題
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「…ん」

太陽の眩しさに目が覚めた。

異様に重い身体を何とか持ち上げる。

頭は霧がかかったようにぼうっとしていて、上手く働かない。



「えーと…確かカカシ先生に個人演習を頼んで、でも全然敵わなくて…そしたらカカシ先生がやる気を出して貰おうって…カカシ先生の影分身に眠らされて…」

ぶつぶつと頭を整理しながら立ち上がる。

ふと、自分の身体に違和感を感じた。

重いのに、軽いのだ。

手足は鉛のように重いのに、肌に感じる空気が異様に軽い。

不思議に思って、ゆっくり自分の身体を見下ろしてみる。

「えぇっ!?」

サクラは頭が真っ白になった。

何しろ見下ろした自分の身体は素っ裸で、文字通り一糸たりともまとっていない。


慌てて周りを見回すが、下着一枚落ちてなかった。

「えっえっ?」

訳がわからずうろたえるサクラ。

「よー、やっと起きたか」

突然頭上から聞こえた男の声。

サクラは反射的に座り込む。

「何今更恥ずかしがってんの」

「か、カカシ先生!」

見上げると木の上に座るカカシが、にこやかに手を振っていた。

「これ何?一体どうなってるの?」

「いやー、サクラにやる気を出して貰うにはこれが一番手っ取り早いかなって」

カカシは右手を掲げる。


「あーっ!私の服!」



カカシの手には、見覚えのあるサクラの赤い服が握られている。ご丁寧に下着付き。

「返してよ!」

「返して欲しかったらね、追い付いてごらん」

よっこいせ、と 立ち上がるカカシ。

「服を取り返すには、先生を倒すしかないよ」

「そんな事言ったって…こんな格好で動ける訳無いじゃない!」

「気配を隠して誰にも見つからずに行動する、それも忍び基本だ」

「そんな…」

「んじゃ、頑張ってね」

カカシは笑顔で手刀を切り。




ボンッ




「ま、待って!」

煙と共に姿を消した。








「ううっ寒い…」

サクラは半泣きで森の中をさ迷っていた。

たかが布一枚無いだけで、これ程心細いとは。

カカシのせめてもの情けで靴だけは残してくれている事が、余計に異様な格好になっている。

少しの風で身体が強張った。

「カカシ先生…」

返事がある筈がない。

もしかしたら、今この時も何処からか泣き顔の自分を見て笑っているかもしれない。

「先生の馬鹿ぁ…」

ぐすぐすと鼻を鳴らす。

こんな情けない格好誰かに見つかれば、それこそ一生の恥だ。

周りに誰かいないか確認するのに必死で、とてもカカシを探す余裕などなかった。
ガサガサと木の枝を掻き分けていると、大きな広場に出る。

サクラ達が普段演習場として使っている場所だ。

通り過ぎようと踵を返す。

「んじゃ、この辺で始めるか」

「そ、そうだね」

「?!」

向こうから誰か近付いて来る。

サクラは咄嗟に木陰に身を隠した。

「良い天気だってばよー」

「そうだね」

(ナルト?それにヒナタちゃんまで)

2人でこんな所に何の用だろう。

「悪いなヒナタ、修業付き合って貰って」


「ううん、そんな事無いよ」

「うそ、2人共いつの間にそんな関係に?」

思わず笑みが零れた。

あの引っ込み思案のヒナタがナルトと2人きりで修業だなんて。

大いなる進歩だ。

「でも手加減はしないってばよ」

「うんっ」

ナルトとヒナタは正面から向かい合う。

「よっしゃ!何時でも来い!」

「はいっ」

ヒナタは印を組み始めた。

( ! あの構え…白眼?)

日向一族に伝わる瞳術。

遥か彼方を見回す千里眼、物を透かして見る透視能力を合わせ持つ。

サクラは一気に青ざめた。
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