二年目。

□2nd
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暗い海に身を投げて
沈んでいく夢を見た
暗くて怖くて
でも、絶望に身を任せたら
すこし楽だった

【2nd:絶望ノ淵ニテ】

暗い世界。
何も聞こえない

「ここはどこ?」

前を歩いているのか分からない
歩いているのかさえ分からないけど
とりあえず足を動かした


『美空ちゃん』

声がした
そのほうをみると
幼いころの達也がいた

「達也・・くん?」
『ねぇ、この左手見て。』
「・・?」


幼い達也がキャッチャーミットから左手を出す
それに驚いた
それはひどく真っ赤
血の赤で染まっていた

『美空ちゃんのせいや』

ほら、こんなふうになっちゃったやん
野球できなくなったのは・・

「い・・や・・」

『返せよ』

「ご・・・め・・」

『ねぇ、苦しいよ、痛いよ』

後ずさりながら
逃げ出す。
コレは私の罪なのに。

「うあああああ!!!!!」

涙を流して・流して・・
走った・・
つまずいて転ぶと
ふと頭を撫でる手の感触があった

『泣かんといてや美空ちゃん』

見上げるとそこには

「き・・いち・・さ・・・!!!」

そこには黒い笑みを浮かべた喜一さんがいた
喜一さんがいたら安心できるはずなのに
どうしてこんなに心が不安になるの?
怖い怖い怖い・・

『なぁ、プロで野球するってやっぱ楽しいじゃろ?』

喜一さんはニッと笑いながら頭においていた手で頬をはたく

「っ・・・!」

『俺が行きたかった所でお前は野球をやっとるんや?』

今度はどてっぱらを蹴られた

「ぐはっ!・・げほっ・・きいち・・さ・・や・・め・」

『お前なんかと、約束したから』

もう一発

「ぐぅっ!!」
『俺は・・死んだんや』

うずくまっていると髪の毛をつかまれ無理やり上を向かされる
そして首をつかまれる
苦しい・・苦しい。
幻であるはずのそれが
本当にあるみたいで
心も、体も苦しかった。

『お前のせいで』
「ちが・・」

涙が流れる
私のせいや・・
私が、私さえいなければ
喜一さんは・・



『やっと、わかった?』

もう一人の私が話しかける

『でも、いいやん。こんなやつら。』

『うちが美空のこと一番わかってるねんから』

『うちいがいいらんやろ?』






----大好きなうちだけの美空ちゃん。





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