◆novel→DFF

□DISSIDIA 〜OP.2-3「恋い恋う」
1ページ/3ページ

規則正しい息遣いと鋭く風を切る音。
フリオニールの視線の先で、白銀の鎧に身を包んだ竜騎士が、ひたすらに槍を振るっていた。
高い魔力を有する者がルーネスと彼を模したバッツだけという状況で、聖竜騎士であるカインの白魔法は非常に有り難い。
だが、
「セシルだって白魔法は使えた……」
釈然としない思いがわだかまりとなって、フリオニールは未だにカインを仲間として心から受け入れられずにいる。
小さく溜め息を落とし、フリオニールは力無く首を振った。
「フリオニール!のーばーらっ!考えてることはだいたいわかるけど、カインに冷たくするのはどうかと思うっス。そりゃあオレだってセシルに会いたかったし、残念だけどさ。王様になるって言ってたじゃん。きっと今のセシルには、この世界より大事なもんが両手いっぱいにあって、こっち来るわけにはいかなかったんじゃないっスか?」
だから、気落ちすんなって!
バシバシとティーダに背中を叩かれながら、それでも意味のある言葉は耳を素通りしていく。
ただ無性に、セシルに会いたかった。
「ありゃあ重傷だ…」
技を盗もうと、カインの鍛錬を側近くでじっと見つめていたバッツが、その背中の向こうのフリオニールを見やって苦笑をうかべる。
「悪いやつじゃないんだ。ただちょっとばかし俺たちの誰よりもセシルに肩入れしててさ。会えなくて拗ねてんだ」
許してやってくれ、と朗らかに告げるバッツに、カインは首を振ってみせる。
「気にしていない。むしろ新参の俺をすんなり受け入れたお前たちに驚いているくらいだ」
「数少ない仲間だからな。仲良くやらないと!」
反動をつけて立ち上がったバッツの手には、いつの間にか一振りの槍。
「なんつーか、せめてセシルの動向だけでも知りたかったんだな。俺たちも、フリオニールも。まっさか10年以上もセシルと会ってないって答えがかえってくるとは予想外だったぜ」
「すまない」
確かに十余年、セシルと顔を合わせていなかったのは事実。
しかし実際は、この世界に召喚をうけるすぐ前に、変わり果てたセシルとバロン城で対峙している。
言えるか、そんな事……。
カインは苦い思いで唇をかみしめ槍を構える。
対するバッツは、カインの葛藤などすべてお見通しだとばかりにニヤリと好戦的に笑んだ。
「ま、近いうちにハッキリするだろ。何もかも、な」
さて、手合わせ願おうか。
二人の視界の端ギリギリにうつるティーダとフリオニール。
気のない返事しかよこさないフリオニールに業を煮やしたティーダが、髪飾り揺れるフリオニールの頭部を思い切り叩いたのが、合図。

跳躍。
宙高く、二振りの槍が交錯した。




―――――――――――


「負けた負けた!つっよいなー!」
感嘆の色強く叫んだバッツが大の字で寝転がった頃。

「夜営はどうする?」
クラウドの問いに、その場にいた全員がウォーリア・オブ・ライトに視線を集めた。
「しばらく歩いて月の渓谷に出られれば、そこに天幕をはろう」
寄せ集めの世界に、つながりの法則は無い。
今歩いていた道が急に別の風景に変わるのが常だ。
「月に行けなかったら?」
特に不安の色もなくあっけらかんと尋ねるルーネスに、ウォーリア・オブ・ライトはかすかに唇のはしを持ち上げ、告げた。
「……その時はその時だ」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ