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□DISSIDIA 〜OP.2-3「恋い恋う」
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ウォーリア・オブ・ライトを先頭に、一行は進む。
「あの人、少し丸くなったよな」
ジタンが隣を歩むスコールにこそりと耳打ちをしているのが見える。
「あれで!?」
二人のやりとりに耳を傾けていたロックが、思わず、といった調子で叫び声をあげ、振り返ったウォーリア・オブ・ライトにじろりと睨みつけられていた。
いつもの自分なら彼らと一緒にほがらかな笑い声をあげていただろう。だが、今は少しも心が動かない。
発散されない濁りに、体ごと蝕まれているようだった。
「フリオニール、遅れているぞ」
しんがりを歩むフリオニールと一行の距離が離れはじめていた。
「疲れてる?」
「いや、大丈夫だ」
心配そうに自分を見上げるルーネスの頭をなでる。
その手をとられ、フリオニールはルーネスに引かれる形で隊列の前方まで進んだ。
ふいに、ウォーリア・オブ・ライトが立ち止まり、宙に手をかざす。その手は手首から先が霞んでいた。
別の断片が、すぐそこにある。
「行こう」
次の一歩を踏み出すと、青い空が一瞬で闇色に染まった。
「月だ」
月の渓谷。
セシルと旅をしていた頃は、月を夜営地に選ぶことは少なかった。
実感のわかない故郷の風景に心がざわめき、思うように休息がとれていなかったセシルの異変にフリオニールが気付き、ウォーリア・オブ・ライトに進言したためだ。

そしていま、フリオニールの心がわけもなく騒ぐ。

見えない壁の向こう、魔導船まで行ければ。そうもらしていたセシルの言葉がふいに思い出され、導かれるように魔導船の方角に視線をやった。


そして、


「……セシル?」
フリオニールは己の発した渇いた声を、どこか遠くで聞いた。
とにもかくにも惹きつけられた視線の先には、

恋い焦がれた、白銀の騎士。



fin.
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