菓子本

□霧の泥舟
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ショート4

「鹿遊び」


セブルスは森の中でジェームズを待っていた。
銃声が聞こえ、胸騒ぎがした。
ガサリと枝を分ける音に振り返ると、切迫した瞳の鹿が立っていた。

「ジェームズ!!」

セブルスは鹿に駆け寄った。
慌てて体のあちこちを調べる。
怪我はないようだった。
安堵の溜息をついた時、鹿が耳をぴくりと動かした。犬の鳴き声がする。次いで人の足音が近付く。

セブルスは鹿の目を見つめ、角を掴んだ。
鹿が示し合わせたように頭を下げた。
よじ登るように背にまたがり、ネクタイをベルトに変えて首に引っ掛けた。

「待てッ!!」

猟師の声がした。

セブルスは振り返り叫んだ。

「すいません!この鹿、知り合いなんです!!」

そう言うなり鹿のわき腹を軽く蹴った。

鹿が勢いよく走り出す。
セブルスは振り落とされないよう必死にしがみついた。

「ジェームズ!もっとゆっくり走れ!落ちる!!」

「ジェームズ!!」


「何?」

鹿に乗ったセブルスの隣に、箒にまたがったジェームズが並んで飛んでいた。

「ジェームズー!!!??」

「ここにいるよセブルス」

「なんで貴様がそこにいるんだ!!」

「なんでって、セブが鹿に乗って走って行っちゃったから追いかけたんだ」

「じゃあッ!僕が乗っているこれは…!?」

「うん、それはアカシカというヨーロッパ全土に生息している…」

「そうではなくて!」

「すごいねセブ!鹿を調教できるなんて…」

「そんなこと言ってないで止めろジェームズ!!」



「うわあああ!!ジェームズ〜〜!!!」





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