S A N J I

□Thanks SS
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Deepest





「…サンジ、何してんの?」

「んー?お勉強」

「って…料理の?」

「そうそう。一流コックな俺も、まだまだ井の中の蛙って事」



彼の視線を釘付けにするその本を覗き込んだ。


あまり見慣れない文字列。

華やかな写真。



「う……読めない」

「遠い遠い外国の料理のお勉強だからな」

「はぁ〜〜それはそれは、楽しみにしてます」



ソファーの背もたれとサンジとの間に腰を下ろした。


狭いその空間でも、目の前の広い背中に体重を預けると、背骨の感触やら体温やらに妙に安心させられる。



「おっと……どうした?」

「ううん。退屈なだけ」

「それは……失礼?プリンセス」



眼鏡を外して本を閉じるは、そう言ったプリンス。


振り向いた至近距離の彼が、ドキドキさせる間もなく私に同じ眼鏡を引っ掛けた。


少し温もりの残ったフレームと、動く度のサンジの匂いが意識を揺るがす。



「ん、伊達眼鏡。似合う?」

「おー似合う似合う」



可愛く笑うその表情。

体全体をまた背けると、持て余した私の両腕を捕まれた。


自分のお腹の前に回して、ぎゅっと私の腕がサンジを抱き締める。


…いや、抱き締めさせられてしまった私の腕。



「あらら。甘えんぼ…」

「いや、こうして欲しいって…思っちゃ駄目かい?」

「いいえ?いっぱいいっぱい、抱き締めてあげる」



廻した腕をぎゅっと締めた。


男独特の骨張った感触。



表向きでも表面だけでもなくて、


骨の骨まで抱き締めてあげる。




「あー…でもやっぱこれじゃあ、な。…物足りねぇ」



腕の中で器用に反転したサンジが、私の中から私を抱き締めた。


変わらず私の腕もサンジの身体に廻したまま。



「…感触はいかがでしょう?プリンス」

「ん?あぁ…柔らかくて最高」

「…そっか」

「のめり込むみたいに……ずっと奥の奥まで、心地いいんだよな」



上辺だけじゃない?

骨も通り越した、もっと奥の奥、手の届かない心の奥の方まで。



骨の骨まで。


ぎゅっと抱き締めて。




骨の髄の髄まで


深く愛してあげる。






End.

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