SHORT
□本音を殺して
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「お疲れ様、リョーマくん。」
そう言って、俺に微笑みかける雪先輩。
俺は、いつしかその笑顔に惹かれていた――…
雪先輩は図書委員の2年の先輩。
委員会なんて面倒くさいなんて思っていた俺も、雪先輩に出会って、その考えは簡単に変わった。
笑顔に、声に、仕草に。
雪先輩のすべてに惹かれた俺は、もっと先輩と関わりたくて、委員会の当番だってサボらずにしていた。
雪「そういえば、リョーマくんって桃城くんと仲良いよね?」
リョーマ「まぁ、先輩だから。
っていうか、雪先輩がなんで桃先輩のこと知ってんの?」
雪「桃城くん、同じクラスなんだ。席替えして席が隣になってね、リョーマくんのことでちょっと話してんだ。」
リョーマ「へー。」
俺には超えられない、学年という壁。
先輩と同じクラスになるなんて、ありえないこと。
桃先輩が羨ましかった。
「なぁ越前!!」
帰り道、いつものように桃先輩に話しかけられた。
リョーマ「なんすか?」
桃城「今日よ、席替えしたんだけどな、これがまたいい席になってよ!!」
あー、きっと雪先輩のことなんだろうな。
そう思ったけど口には出せず。
桃城「なんとなんとよ!!雪の隣なんだよ!!
越前も知ってるだろ?図書委員の!」
リョーマ「知ってるっス。けどそれがなんなんすか?」
桃城「俺、1年のときから狙ってんだよ、雪のこと!
越前も協力しろよー!!」
リョーマ「え、あ、ちょっと桃先輩!」
桃先輩はそれだけ言うと、俺を置いて自転車で去っていった。
協力なんて…
俺だって雪先輩のことが好きだ。
でも、こう言われてしまった手前、俺は桃先輩を裏切るなんてできるのか。
自分の気持ちに歯止めはかかるのだろうか…。