ハツコイ。

□Act.1 屋上 ―ROOFTOP―
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これは偶然なの?


それとも運命…?


私の暗い心に、一筋の光が差し込んだような、そんな気がしたの――…。




Act. 





ガシャンッ!!

ガタンッ!




大きな音と共にフェンスや地面に叩きつけられる身体。



「アンタちょっと、調子乗りすぎだから。」


「先輩とかセンセーの前だけ、いい子ぶってんじゃねーよ。」


「マジウザイんだけどぉ〜。」


「さっさと消えてよ、この世からさー。」


「っていうか、サッカー部の高橋先輩、コイツに気あるみたいだよ〜。」


「は?ありえねぇー」


「どうせ色目でも使ったんでしょ〜?マジキモ〜」


「そうでもしなきゃ、高橋先輩がこんなやつ、目にとめるわけないじゃん」


「だよね〜。所詮、イジメられっ子だしね。」


「たしかに〜!」



ギャハギャハと品の無い笑いが響く。


しかし、この場でたった一人だけ、全く笑顔の無い者がいた。



…それが私、藤咲穂香。


イジメを受けている張本人。


さっきから、覚えのないことを言われたり、蹴られたり、殴られたり…。

これがかれこれ、2週間続いてる。


しかも今日は屋上でやられてる。

これで水をかけられたもんだから、もう5月半ばって言っても寒くてしょうがない。



「あ、もうすぐお昼休み終わるよ〜。」


「あ、マジ?そろそろ教室帰る?」


「そうしよっか〜。」


「藤咲、誰にも言うんじゃねぇぞ。」


「言ったら、バドミントン部の先輩、大変な事になるからねー」


「っていうか、アンタも、バドミントンが出来なくなるからね。」


「だから教室では、ちゃんと友達ごっこしてよね?」


穂香「…。」


「おい、返事しろよ!」


見下すような視線と共に鳩尾に降ってきた激痛。


穂香「痛っ…」


痛みのあまり声が漏れる。


「わかったら返事しろよ、バーカ。」


穂香「…わかった。」


「それじゃ、私達教室戻るからね、穂香ちゃん♪」





なにが友達ごっこよ…


教室にいる間だけ友達のふりして、何が楽しいのよ…。



穂香「はぁ…もう、こんなの疲れたよ…。」


屋上って…


ここから飛び降りて、死ねって言いたいの…?


私…

バドミントン、やめたくないよ…。


大好きな先輩達、傷つけたくないよ…。



いつもは流す事さえ無い涙が、何故か溢れて止まらない。



穂香「っ…

なんで止まんないのよっ…」



その時だった。


「誰かいるのか…?」


ドアが開く音とともに、少年の声が聞こえた…






 
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